固体飛跡検出器(読み)こたいひせきけんしゅつき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「固体飛跡検出器」の意味・わかりやすい解説

固体飛跡検出器
こたいひせきけんしゅつき
solid state track detector

荷電粒子進路に沿って生じた放射線損傷を,適当な方法で飛跡として検出できる絶縁体の固体をいう。荷電粒子の進路の単位長さあたりの生成イオン対の数が,物質によって定まる一定限度をこえると,潜在飛跡を生じる。雲母,ガラス,ジルコン,その他の鉱物では半径数十Åの潜在飛跡が電子顕微鏡で観察されている。潜在飛跡を適当な試薬エッチングすると光学顕微鏡で観察可能な飛跡となる。鉱物では核分裂片の飛跡が検出可能である。ポリカルボナートニトロセルロースなどの高分子物質では,より軽い原子核も飛跡を生じ,α粒子でも 1MeV以下ならば検出される。潜在飛跡は常温では長期間保存され,重一次宇宙線の検出,原子核実験,各種の鉱物の年代測定など応用が広い。 (→飛跡検出器 )

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化学辞典 第2版 「固体飛跡検出器」の解説

固体飛跡検出器
コタイヒセキケンシュツキ
solid state track detector

ある種の絶縁固体(結晶,無機ガラス,プラスチック)に荷電粒子を入射させ,粒子の通路にそってできた放射線損傷を化学的にエッチングによって拡大し,顕微鏡を用いて直接に飛跡を観測できるようにしたもの.記録された飛跡は長期保存に耐えるが,温度を上昇させると,飛跡の数と長さは時間とともに減少し,ついには消滅する.検出限界は電離密度で決まるため,高エネルギー粒子に対しては感度が悪く,高エネルギー粒子の強いバックグラウンドのなかでの核種検出器として使える.また,入射粒子の原子番号と質量数の関数として飛程が決まるので,いろいろな物質の薄い層を積み重ねて用いれば,入射粒子の核種を決定することができる.そのほか,宇宙線中の重荷電粒子の検出,いん石の年代測定などにも利用されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報