器官快楽(読み)きかんかいらく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「器官快楽」の意味・わかりやすい解説

器官快楽
きかんかいらく

フロイトによって,幼児性欲の本質的特徴を指すとして使われた言葉。性欲は,もともと自立的な欲動ではなく,食物を摂取して生命維持を図る (自己保存) 欲動に伴って,2次的に形成される。たとえば,子供が栄養を補給するために母親乳房をしゃぶるときの快感は,単にお腹をいっぱいにするという目的に限定されていないのが容易に観察される。子供は満腹しても,まだ口唇の周囲の快感のなごりを楽しんでいて,しばしば空腹いかんにかかわりなく,この快楽そのものを求めているのが見られる。これは,いわば本来の目的とは別に与えられるおまけの快感であるが,後の性活動にとっては,性の快楽がもともと性器に限定されていなかったのを示す点で重要な意味を持つ。フロイトは性欲動の特徴を,多くの器官起源として生まれ,独立して働き,やがてそれぞれに器官快楽を得ようとしながら全体として統合されていく過程と考えた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

自動車税・軽自動車税

自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...

自動車税・軽自動車税の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android