精選版 日本国語大辞典 「嗜」の意味・読み・例文・類語
たしな・む【嗜】
〘他マ五(四)〙
① 常日ごろからある芸事に親しんでいて、ある程度の水準にまで達している。
※今鏡(1170)六「さやうに道をたしなみて、やんごとなくなんおはしける」
※日葡辞書(1603‐04)「ゲイノウヲ taxinamu(タシナム)」
② 何かに備えて、ある品物を用意しておく。
※御伽草子・猫の草紙(江戸初)「又檀那をもてなさんとて、煎豆、坐禅豆をたしなみおけば」
③ 気を配って行なう。
(イ) 工夫して行なう。
※風姿花伝(1400‐02頃)六「風情を持ちたる詰めを、たしなみて書くべし」
(ロ) 悪い結果にならないよう、気をつけて身をつつしむ。用心する。
※応永本論語抄(1420)憲問第一四「伯玉は過のすくなきやうにたしなめども、其さへ猶あたはずと云」
(ハ) 注意する。気をつける。
※咄本・露休置土産(1707)五「壱人ははなしする時、せなかをかく。又壱人は、手にてはなをなでる。又壱人は目をなでるくせ有。たがひにいひ合、かさねてからは、たがひにたしなみ、くせをなをさんとかたくいひ合ける」
④ きちんとした身なりをする。
※俳諧・望一千句(1649)四「小初瀬や更に霞まぬ鐘つきて 歯(は)をもたしなみ身をけはひ坂」
⑤ 嗜好品などを適度に口にする。
※形影夜話(1810)下「昔しは食せざりしものも、今専らに嗜み」
たしなみ【嗜】
〘名〙 (動詞「たしなむ(嗜)」の連用形の名詞化)
① 芸事などに親しむこと。
※風姿花伝(1400‐02頃)二「およそ、女懸り、若き為手(して)のたしなみに似あふ事なり」
② 日頃の心がけ。そのものとしての、立場としての心得。用意。覚悟。
※太平記(14C後)二「朝暮只武勇の御嗜(タシナミ)の外は他事なし」
③ つつしみ。節制。
※羅葡日辞書(1595)「Castus〈略〉キレイ ナル、taxinami(タシナミ) アル モノ、フボンヲ タモツ モノ フインヲ タモツ モノ」
④ 身を飾ること。おしゃれ。身だしなみ。
※読本・占夢南柯後記(1812)六「すつる身を、何たしなみの髪化粧(かみけはひ)」
⑤ 嗜好品などを適度に口にすること。
たしみ【嗜】
〘名〙 (動詞「たしむ(嗜)」の連用形の名詞化) たしむこと。このむこと。嗜好。
※蓬莱曲(1891)〈北村透谷〉二「そのおのれてふ自儘者は種々の趣好(タシミ)あるものよ」
たし・む【嗜】
〘他マ四〙 このんである事を行なう。たしなむ。たしぶ。
※涅槃経集解巻十一平安初期点(850頃)「諸の弟子に悉皆甘嗜(タシマ)しむ」
たし・ぶ【嗜】
〘他バ四〙 =たしむ(嗜)
※蘇悉地羯羅経略疏寛平八年点(896)二「或は其の味を嗜(タシフ)」
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