口書（読み）クチガキ

デジタル大辞泉

くち‐がき【口書（き）】

１ 筆を口にくわえて書や画をかくこと。
２ 手紙などの書き出し。はしがき。序言。
３ 江戸時代、被疑者などの供述を記録したもの。足軽以下、百姓・町人に限っていい、武士の場合は口上こうじょう書きという。

こう‐しょ【口書】

「口書き3」に同じ。

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

くち‐がき【口書】

〘名〙

① 江戸時代の訴訟文書の一種。出入筋（民事訴訟）では、原告、被告双方の申分を、吟味筋（刑事訴訟）では、被疑者、関係者を訊問して得られた供述を記したもの。口書は百姓、町人にだけ用いられ、武士、僧侶、神官の分は口上書(こうじょうがき)といった。

※梅津政景日記‐慶長一七年（1612）八月二六日「又出入の様子存たるもの共の口書にて見申候」

② 江戸時代、検使役人が作成した調書のこと。変死や殺人、傷害など検使を要する事件が発生した際、現場で関係者の供述を記したもの。

※浄瑠璃・傾城反魂香（1708頃）中「雑式一々口書きし」

③ 筆を口にくわえて文字や絵をかくこと。また、そのかかれたもの。

④ 文章の書き始めの部分。また、序文など。

※浮世草子・御前義経記（1700）五「先口書(クチガキ)に今晩田舎の御客御座候に付」

こう‐しょ【口書】

〘名〙 江戸時代、訴訟関係者の法廷での口述の筆記。くちがき。

※土屋蕭海宛吉田松陰書簡‐安政元年（1854）九月三日「先達て口書相澄み候事故」

出典　精選版 日本国語大辞典

改訂新版　世界大百科事典

口書 (くちがき)

江戸時代の調書。武士，寺社などの場合は〈口上書〉と称した。吟味筋の裁判（刑事裁判）では，審理が熟すると各被疑者ごとに自白を録取した口書を作成し，原則として奉行の面前で朗読したうえで押印（印形またはつめ印，武士は書判）させる（〈口書読聞（よみきけ）〉の手続）。この口書を〈吟味詰（つま）り之口書〉といい，犯罪事実はこれによって認定され，あとは書面審理で刑罰が決定される。また出入筋では，原被両告の主張を1通の口書に併記し（金公事（かねくじ）はさらに略式），朗読して押印させた後に奉行が確認を行い，これを基に裁許を申し渡した。
執筆者：神保 文夫

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

世界大百科事典（旧版）内の口書の言及

【吟味筋】より

…町奉行所では吟味方与力が白洲とは別の場所で取り調べた。審理は被疑者の自白(白状)を得ることを目的とし，その犯罪事実は役人が書式に従って口書（くちがき）に録取した。口書ができると奉行は法廷に出座し，事件(一件)の関係者一同を集め，役人が口書を読み聞かせて(口書読聞（くちがきよみきけ）)押印させ，あるいはすでに押印させた口書を確認させた(口書口合（くちがきくちあわせ）)。…

※「口書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」