原虫クリプトスポリジウム(読み)げんちゅうクリプトスポリジウム

百科事典マイペディア の解説

原虫クリプトスポリジウム【げんちゅうクリプトスポリジウム】

腸管に寄生する原虫の一種家畜や野生動物などに寄生し,排泄物とともに川などに流れ込む。人には下水道などを通して感染する。1912年に米国でイエネズミから発見され,1976年には人間への感染例が報告された。1980年代なかばからは欧米では毎年のように,集団下痢などが発生するようになった。1993年,米国のミルウォーキーで発生した際には40万人以上が感染,免疫力が極端に低下したエイズ患者を中心に400人以上の死者を出した。 日本では,1994に神奈川県で発生。1998年6月には埼玉県越生町で,9000人近くの住民が下痢,腹痛を起こし,注目を集めた。 主な症状は,下痢,腹痛,発熱など。効果的な薬や治療法はまだないが,健康であれば,1〜2週間で自然治癒する。 最大の問題は,この原虫がオーシストと呼ばれる頑丈な殻の中に入っており,塩素による殺菌作用を期待することができないこと。通常の浄水設備で予防は可能だが,浄水が不十分な場合は,容易に通過できる。ただし,加熱および冷凍に弱いので,飲み水なら1分間煮沸すれば問題はない。→浄水場

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