南越前(読み)みなみえちぜん

改訂新版 世界大百科事典 「南越前」の意味・わかりやすい解説

南越前[町] (みなみえちぜん)

福井県中部,南郡の町。2005年1月今庄(いまじよう)町,南条(なんじよう)町と河野(こうの)村が合体して成立した。人口1万1551(2010)。

南越前町中南部の旧町。南条郡所属。人口5134(2000)。日野川の上流に位置し,武生(たけふ)盆地南端に当たる。河川沿いに低地が開けるほかは,越美山地に属する山地が広く占め,滋賀・岐阜両県に接する。北陸街道と西近江路が通り,中山峠,木ノ芽峠,栃ノ木峠などの峠をひかえた交通の要衝で,中心集落の今庄は古くから宿場町として栄え,藩政時代には本陣が置かれた。1962年,北陸本線最大の難所といわれた今庄~敦賀間に北陸トンネルが開通した。また北陸自動車道が通り今庄インターチェンジがある。農林業を基幹産業とし,山間部ではケイ石を産出する。日野川の上流には広野ダムがある。慈眼寺,伊藤氏庭園(名勝),夜叉ヶ池があり,古戦場も多い。

南越前町北西部の旧村。南条郡所属。人口2255(2000)。敦賀湾北東岸に位置し,丹生(にゆう)山地の南端に当たる山地が海岸線に迫り,急崖の断層海岸を形成する。海岸段丘が発達し,沿岸部と谷底に小集落が散在する。近畿から越前に入る海上交通の要地であり,藩政時代には北前船の港として栄えた。現在は糠,甲楽城,河野の漁港を中心とする定置網漁業沖合漁業を基幹産業とし,ブリ,サバ,マグロなどの水揚げが多い。冬季は波が荒く出漁が困難なため古くから杜氏の出稼ぎが盛んである。海岸線は越前加賀海岸国定公園に含まれ,河野海岸有料道路(2008年無料開放)が通る。

南越前町北部の旧町。南条郡所属。人口5832(2000)。日野川の中流武生盆地の南部に位置する。北陸街道を扼する要衝の地にあり,近世には鯖波(さばなみ)と脇本が宿場町として栄えた。脇本宿の本陣・宿問屋を務めた中山家は周辺46村を取り締まる大庄屋を兼ねていた。農業が主産業で,日野川沿いの肥沃な低地では米作が盛ん。カナリアの飼育が行われ,海外へも輸出される。山間部ではケイ石を産出し,ケイ石工場もある。JR北陸本線が通じ,北接する武生市への通勤者も多い。町の南端にある杣(そま)山には,南北朝時代に南朝方の瓜生氏の拠った杣山城跡(史)があり,一帯は森林公園になっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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