医薬品副作用被害救済制度(読み)いやくひんふくさようひがいきゅうさいせいど

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

医薬品副作用被害救済制度
いやくひんふくさようひがいきゅうさいせいど

医薬品を適正に使用したにもかかわらず副作用によって生じた被害を対象に、医療費や通院・入院費用などを給付する公的制度。給付費用は医薬品製造販売業者から納付される拠出金を原資としている。ここでいう医薬品とは、医療機関により投薬された、あるいは処方された医薬品、ならびに市販一般用医薬品大衆薬)をさす。独立行政法人医薬品医療機器総合機構救済給付の実務にあたる。「適正に使用」とは、原則的には医薬品の容器あるいは添付文書に記載されている用法用量および使用上の注意に従って使用した場合をさす。救済給付の対象となる健康被害は、副作用により入院を必要とする程度の疾病、日常生活の用を自分で足せない、あるいは日常生活が著しく制限される程度の障害などで、死亡した場合はその患者の遺族に給付される。ただし、法定予防接種を受けたことによるものや、医薬品の製造販売業者などに損害賠償責任が明らかな場合、癌(がん)その他の特殊疾病に使用される一部の医薬品(対象除外医薬品)等による場合などは対象とならない。患者からの申請を受けて厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の副作用・感染等被害判定部会で審議され、その結果に基づき機構が給付を決定する。

[編集部]

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知恵蔵 の解説

医薬品副作用被害救済制度

医薬品を正しく使用したにもかかわらず生じた副作用による被害を救済するために設けられた制度。医薬品は定められた条件で使用しても、副作用を皆無にすることはできない。すなわち、医薬品は有効性と安全性のバランスの上に成り立っており、万全の注意を払って使用したとしても副作用の発生を完全には防止できない。このため、医薬品(医療用医薬品だけではなく一般用医薬品も含む)の副作用により健康被害が生じた場合に、医療費等の給付を行う制度である。対象となるのは原則として添付文書に記載されている用法・用量及び使用上の注意に従って使用された場合だが、それを逸脱した場合などの個別の事例については、現在の医学・薬学の学問水準に照らして総合的な見地から判断される。救済給付の対象にならないケースとして、(1)医薬品の不適正な使用によるもの、(2)医薬品の製造業者や販売業者などに損害賠償の責任が明らかな場合、(3)救命のためやむを得ず通常の使用量を超えて医薬品を使用したことによる健康被害で、その発生があらかじめ認識されていた等の場合、(4)がんその他の特殊疾病に使用される一部の医薬品(対象除外医薬品)等による場合、などが挙げられる。この医療費等の給付に必要な費用は、製薬関連企業などから納付される拠出金から充てられる。

(澤田康文 東京大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

医薬品副作用被害救済制度
いやくひんふくさようひがいきゅうさいせいど

医薬品等の副作用による健康被害を受けた人に対する救済制度。1980年創設。当初は医薬品副作用被害救済基金が実施していたが,今日では医薬品医療機器総合機構法に基づき,医薬品医療機器総合機構が実施する。医薬品には厳しい治験制度が設けられているが,それにもかかわらず単独あるいは併用によって予期せぬ副作用が発生することがある。製造者責任の観点にとどまらず,人の生命にかかわる医薬品の副作用は責任の所在が厳しく問われなくてはならないとの考えから,医薬品を適正に用いたにもかかわらず発病したり,副作用があったり,死亡したりした被害者の救済を,厚生労働大臣の認可のもとに行なう。すべての製薬企業に被害者救済の第一義的義務が生ずるという考えから,企業の拠出金を被害者への給付金にあてる。なお,発現した副作用については,情報交換によって被害を最小限にするため世界保健機関 WHOへの連絡が義務づけられる。

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