医療介護総合確保推進法(読み)いりょうかいごそうごうかくほすいしんほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「医療介護総合確保推進法」の意味・わかりやすい解説

医療介護総合確保推進法
いりょうかいごそうごうかくほすいしんほう

地域における医療介護サービスを一体的に提供するための法律。社会の高齢化に伴い、将来にわたって存続しうる社会保障制度を確立するために、地域での効率的かつ質の高い医療や介護の提供を総合的に確保する地域包括ケアシステム構築と、それに向けた税制や法律の整備を意図する。正式名は「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(平成26年法律第83号)。2014年(平成26)6月公布とともに施行され、関係法令である医療法や介護保険法、地域介護施設整備促進法(地域における公的介護施設等の計画的な整備等の促進に関する法律)の改正順次行われる。

 法律の骨子は、(1)新たな基金の創設と医療・介護の連携強化、(2)地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保、(3)地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化、などである。(1)は地域介護施設整備促進法などに関するもので、医療・介護の連携強化のために厚生労働大臣が基本的な方針を策定し、各都道府県は医療・介護の事業計画(病床の機能分化・連携、在宅医療・介護サービスの推進、医療従事者などの確保・育成)を作成する。その計画実施のために消費税増税分を財源とした基金を各都道府県に設置する。(2)は医療法に関するもので、医療機関が病床の医療機能(急性期、回復期、慢性期の別)を都道府県に報告し(病床機能報告制度)、都道府県はその報告に基づいて地域の医療提供体制の将来ビジョンを策定する。また、医師確保を支援する地域医療支援センターの機能を法的に位置づける。(3)は介護保険法に関するもので、高齢者が健康で安心して地域に住み続けるために、在宅医療、介護連携などの地域支援事業の充実を図り、介護保険の予防給付(訪問介護・通所介護)をこの事業に移行し、市町村主体とする地域の包括的な支援・サービス提供体制を構築する。また、特別養護老人ホームの機能を在宅生活が困難な中重度の要介護者に特化し、低所得者の保険料の軽減や一定以上の所得がある者の保険料自己負担を2割へ引き上げるなどの見直しが行われる。さらに、「地域ケア会議」を制度的に位置づけ、個別事例(困難事例など)の検討などによって、職種間にまたがるケアマネジメントや地域支援のネットワークを構築する。とくに地域包括ケアシステムは団塊の世代が75歳以上となる2025年の構築を目ざして、各市町村が地域別に異なる高齢者のニーズと医療・介護の実情を正確に把握したうえで、各地域での豊かな老後生活に向けて、住民や医療・介護施設などと連携・協議し、地域の多様な主体を活用しながら高齢者を支援することを目ざしている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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