匙・匕(読み)さじ

精選版 日本国語大辞典 「匙・匕」の意味・読み・例文・類語

さ‐じ【匙・匕】

〘名〙 (「茶(さ)(じ)」の字音による語か)
① 液体や粉末などをすくい取る道具。皿状のものに柄がついた形をする。金属、木、竹、陶器などで作る。「かい(匙)」よりも小さいものをいうか。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「しろかねの鉢・金椀・箸・匙(かひ)さじ銚子水瓶など」
② 特に、医者が薬を調合するのに用いるものをさしていう。〔羅葡日辞書(1595)〕
※俳諧・父の終焉日記(1801)五月三日「迅碩は、おのれ匕にて薬も得とどかざるむね告たりけるに」
③ (薬をさじで調合するところから) 薬の調合。また、薬。
※俳諧・西鶴五百韻(1679)早何「月の都供も連ずに出しかど〈西六〉 剤(サジ)がきいては乗物にのる〈西吟〉」
④ (転じて) 医者をいう。
※歌舞伎・早苗鳥伊達聞書(実録先代萩)(1876)序幕「今は御本家のお匙(サジ)同様、御扶持を頂戴なして」
[語誌](1)「さ」は「茶」の漢音で、「さじ」は「茶匙」の字音語であるという説が広く受け入れられている。中世茶道、香道では「香匙(キャウジ)」のように同様の語構成の語が見られる。
(2)中国の茶における「匕」は、抹茶をすくって器に入れ激しくかきまわすのに用いる。ただしこれは食事に匙(匕)を常用する文化一端に位置づけられる。
(3)日本の「サジ」は、茶の湯の普及以前から存在しており、「カヒ(匙)」に対して俗語的に常用されていた「サジ」が、ふさわしい漢字表記を獲得したのが、「茶匙」であるという可能性もある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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