切・布(読み)きれ

精選版 日本国語大辞典 「切・布」の意味・読み・例文・類語

きれ【切・布】

[1] 〘名〙 (動詞「きれる(切)」の連用形の名詞化)
切れて残った、物の一部分切れ端
(イ) 木、紙、髪などの切れ端。
※和泉式部集(11C中)上「宮法師になりて、髪のきれをおこせ給へるを」
(ロ) 布帛(ふはく)の切れ端。また、広く反物(たんもの)織物をもいう。
※閑居友(1222頃)上「腰には薦のきれをまきてぞありける」
(ハ) 書画などの、古人筆跡断片。断巻。「高野切」「本阿彌切」「つたぎれ」など。
※咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上「弘法大師の心経のきれを三くだりばかり求め出して」
(ニ) ほんのわずか。
※四河入海(17C前)一三「又は我家に食物のきれがない程に鳥も不来と云心ぞ」
② 数多い同類の中の一人。多く、「とるにたりない者だが」という謙遜の気持を含めていう。はしくれ。
※玉塵抄(1563)四三「とをい国に王のきれにないて名ばかり王にしてをかれたぞ」
③ つながっているもの、続いているものなどが切れること。また、その切れ目や切れぐあい、刃物の切れあじ。
※歌舞伎・曾我綉侠御所染(御所五郎蔵)(1864)五幕「この百両を手切(てきれ)にやり、お主へ御恩を送らせて、それを切(キレ)にさっぱりと、縁を切ってしまふほどに、どうぞその金下さんせいな」
④ (目について) 目じりの方へ切れ込んでいるぐあい。
※椀久物語(1899)〈幸田露伴〉二「癇癖知るる眼尻のきれ、色白にして柔和なれど侮り難き風情あるは」
小判などに付いた、きず。また、きずのついた小判。
※浮世草子・好色二代男(1684)三「其小判は切(キレ)もなく、かる目もないかととへば」
⑥ 端女郎が色を売るのに、時間を区切ること。
随筆・吉原失墜(1674)「きれをうるとは、いかなるゆへとたづね侍れば」
遊女をいった、和泉国(大阪府)堺の語。
※評判記・色道大鏡(1678)一四「伊勢の遊び女を彦右といひ、尾州にては壁むしり〈略〉泉州堺にてはきれといふ」
⑧ (「一切れ」のかたちで) 男女のかりそめの情事
浄瑠璃淀鯉出世滝徳(1709頃)上「しんぞ一きれふるまひたい」
⑨ 立花で、枝の前に十文字になるように他の枝を出すこと。
※男重宝記(元祿六年)(1693)三「よその枝のよこへ出たるまへへ立(たて)に出し、たてに出たる前へよこに出して、十文字になすべからず。切(キレ)とてきらふ事也」
石材一尺(約三〇センチメートル)立方のもの。
⑪ 人の才能や技術などの鋭さ。「頭の切れがいい」「切れのいい論文
⑫ 投げた球などの勢いや冴え。また、その曲がりぐあいの鋭さ。「カーブの切れが悪い」
[2] 〘接尾〙
① 切ったものを数えるのに用いる。
※宇治拾遺(1221頃)八「汝が身は先(まづ)二百にきりさきて、おのおの一きれづつ取りてんとす」
② 江戸時代、一分金を数えるのに用いる。枚または個の代わりに使われる。
※坂上池院日記‐万治四年(1661)「右入用の金有増金一分十六万八百十六切と云々」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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