其・汝・己(読み)し

精選版 日本国語大辞典 「其・汝・己」の意味・読み・例文・類語

し【其・汝・己】

〘代名〙
① (其) 他称。相手側の事物、また、すでに話題にした事物をさし示す(中称)。それ。
古事記(712)下・歌謡烏草樹(さしぶ)の木 斯(シ)が下に 生ひ立てる 葉広 斎(ゆ)つ真椿 斯(シ)が花の 照り坐(いま)し 芝(シ)が葉の 広り坐(いま)すは 大君ろかも」
② (汝) 対称
※古事記(712)下・歌謡「大魚(おふを)よし(しび)突く海人よ 斯(シ)が離(あ)れば うら恋(こほ)しけむ 鮪突く志毘」
③ (己)(反射指示) 自身をさす。
万葉(8C後)一八・四〇九四「老い人も 女童も 之(シ)が願ふ 心足らひに 撫で給ひ 治め給へば」
[補注]専ら格助詞「が」を伴って用いられるが、「の」を伴わないところから、これを指示代名詞とせず、人代名詞に入れるのが妥当とする説もある。→

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