偽痛風(読み)ぎつうふう(英語表記)Pseudogout

六訂版 家庭医学大全科 「偽痛風」の解説

偽痛風
ぎつうふう
Pseudogout
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな病気か

 痛風は尿酸塩の結晶関節炎症を起こして発症しますが、偽痛風はピロリン酸カルシウムの結晶によって起こる関節炎です。この結晶が軟骨に沈着するために、軟骨石灰化症(なんこつせっかいかしょう)とも呼ばれています。

 とくに膝関節に多く発症し、時に多関節に及ぶこともあります。60歳以降に多く認められ、男女差はありません。

原因は何か

 ピロリン酸カルシウムの結晶が関節の軟骨組織に沈着し、その結晶が関節内に遊離すると、それに反応して炎症が起こるとされています。ほとんどが原因は不明ですが、加齢によって軟骨が傷んだ部分に結晶が沈着しやすいことも関係があるといわれています。

 また、若年者で多発性に発症する遺伝性のものや、副甲状腺機能亢進症(ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう)に続発するものもあります。ただし、この結晶が沈着していても発症するのは4分の1程度といわれています。

症状の現れ方

 関節のはれ、痛み、発赤、熱感が出現します。半数以上が膝に出ますが、その他、手や足関節にも出現します。また、発熱、体重減少などの全身症状を伴うこともあります。

 偽痛風には、以下に示すようにいくつかの病型があります。

A型:偽痛風発作型

 急性、亜急性の関節炎を繰り返します。好発部位は70%以上が膝関節ですが、時に手、肘、足関節にも出ます。

B型:偽性関節リウマチ

 比較的慢性に経過し、多関節に及ぶ炎症所見の強い型です。朝のこわばりがみられ、赤沈値が亢進し、CRP陽性のことがあり、関節リウマチと誤ることがあります。

C型:偽性変形性関節炎型

 徐々に進行する慢性関節炎で、急性発作を伴うタイプで、やはり圧倒的に膝関節に多くみられます。

D型:偽性変形性関節炎型

 C型に急性増悪を伴わないタイプです。

E型:無症状

 偽痛風の50%を占め、X線上で石灰化を認めますが、症状がないタイプです。

F型:偽性神経障害性関節症型

 高度の関節破壊がみられるタイプです。

検査と診断

 発作時の血液検査では、白血球数の増加、赤血球沈降速度の亢進、C反応性蛋白(CRP)の陽性など、炎症性の変化がみられます。X線写真で関節軟骨半月板に線状、点状の石灰化像が認められますが、骨の破壊像はみられません。

 関節の液を検査して、ピロリン酸カルシウムの結晶を証明すれば、診断に非常に有用です。

治療の方法

 結晶を薬で取り除く方法がないため、局所の安静と痛みを取ることが基本です。

 急性期には非ステロイド性抗炎症薬経口投与で痛みを和らげます。症状に応じて、副腎皮質ステロイド薬ヒアルロン酸を関節内に注入します。発熱などの全身症状が現れた場合は、副腎皮質ステロイド薬の内服を行うこともあります。

 また、慢性化した場合でも同様に、非ステロイド性抗炎症薬の内服や関節内への注射が行われます。変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう)を合併していることが多いため、生活習慣改善やリハビリテーションなども行います。症状が強い場合は、関節鏡で関節内を洗浄したり、人工膝関節置換術などを行うこともあります。

病気に気づいたらどうする

 この病気自体は、変形性関節症と同様にとくに重篤なものではありませんが、他の重要な病気と似ている部分もあるので、このような症状が出現すれば整形外科へ受診してください。

関連項目

 痛風化膿性関節炎関節リウマチ

田中 浩

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「偽痛風」の意味・わかりやすい解説

偽痛風
ぎつうふう
pseudogout

65歳以上の高齢の女性に見られる関節炎で,以前は日本人には珍しかった。正式にはピロリン酸カルシウム沈着症といい,急性型と慢性型がある。急性型は急性の単関節炎で,痛風に似ているため,この名がある。膝 (ひざ) 関節のほか手関節,中手骨指骨間関節,足関節などに多いが,複数関節に同時に急性炎症の起こることもある。けがや外科手術をきっかけとして起こることも多く,感染性関節炎と間違われやすい。慢性型はこわばり,疼痛 (とうつう) 等の症状が現れ,運動制限を主に膝関節,手関節に訴える。他の関節を侵すこともあり,時に強い関節の変形を起こすこともある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報