偉・豪(読み)えらい

精選版 日本国語大辞典 「偉・豪」の意味・読み・例文・類語

えら・い【偉・豪】

〘形口〙 えら・し 〘形ク〙
[一] 物事の程度のはなはだしいさまを表わす。
① (副詞的にも用いられて) なみなみでない。大変だ。ひどい。
雑兵物語(1683頃)下「武辺ばなしで気をつっぱって血がゑらくはしったゆへか」
② 思いもかけない。とんでもない。予想外だ。
※落語・甲子待(1895)〈柳家禽語楼〉「『俺等(わしら)が親爺の代には可怪(エレヘ)物が出ましてなア』『何(ど)んな可怪(エライ)物が出ました。大女か何か出ましたか』」
③ 苦痛などが激しく、たいへんである。耐えがたい。
浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)野崎村「サア居(すへ)ますぞへ、アツツアツツゑらいぞゑらいぞ」
④ 疲れている。つらい。しんどい。
咄本・諺臍の宿替(19C中)九「ヲヲゑらいゑらい、なんじゃ重たいやつじゃ」
[二] 物事の状態などのすぐれているさまを表わす。
① 社会的な地位身分が高い。
※雑俳・笠付類題集(1834)「ゑらひやつ・鎗立てさして馬にのる」
② 行動や識見がすぐれている。立派だ。
※咄本・諺臍の宿替(19C中)二「大星由良之介ほどゑらい人はなひ」
[語誌](1)(一)①の挙例「雑兵物語」などの近世前期東国語資料に用例が見られるが、近世中期以降は上方語での使用が一般的になる。江戸語では、遅れて一八〇〇年前後から使用が認められる。
(2)近世語としては一般に(一)の意で用い、幕末に至って(二)の意が定着し始める。また、幕末の上方では(一)③④の用法も現われる。
(3)近世では一般に仮名書きであったが、明治中期ごろから次第に「偉」の字を当てる表記が増える。
えら‐が・る
〘自ラ五(四)〙
えら‐げ
〘形動〙
えら‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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