倭文部(読み)しとりべ

精選版 日本国語大辞典 「倭文部」の意味・読み・例文・類語

しとり‐べ【倭文部】

〘名〙 倭文(しとり)を作るために大和政権が設定した技術者集団。
書紀(720)垂仁三九年一〇月(北野本室町時代訓)「大刀一千口を作らしむ。是の時に楯部(たてぬひへ)、倭文部(シトリヘ)〈略〉并て十箇の品部(とものみやつこら)をもて〈略〉賜ふ」

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改訂新版 世界大百科事典 「倭文部」の意味・わかりやすい解説

倭文部 (しとりべ)

委文部とも書く。〈しつおりべ〉の約で,大化前代の織成に従った職業部の一つ。倭文(しつ)は栲(たく),麻,苧(からむし)などの緯(よこいと)を青,赤などに染め,乱れ文様を織り出したとされる日本古来の織物で,大陸伝来の綾に対し〈倭文〉と表記された。初見は《日本書紀》垂仁39年条で,五十瓊敷皇子(いにしきのみこ)が賜った10個の品部の内に倭文部が見える。分布はひろく畿内,東海,東山,北陸,山陰山陽,南海の諸道にわたっている。伴造(とものみやつこ)は倭文連(むらじ)。684年(天武13)に宿禰(すくね)と改姓された。本拠は葛木倭文坐天羽雷命(かつらぎのしどりにいますあめのはずちのみこと)神社のあった大和国葛城郡であろう。天羽雷を祖神としたことは《先代旧事本紀》《古語拾遺》に倭文連遠祖天羽槌雄神,《日本書紀》神代巻に倭文神建葉槌命とあることより証せられる。しかし《新撰姓氏録》には大和神別の委(倭)文宿禰を神魂命の後,また河内神別の委文宿禰,摂津神別の委文連を角凝魂命の後とし,これと天羽雷命との関係は不明である。
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