俳言(読み)ハイゴン

デジタル大辞泉 「俳言」の意味・読み・例文・類語

はい‐ごん【俳言】

俳諧に用いて、和歌連歌には用いない俗語漢語などの総称俗言ぞくごん。はいげん。

はい‐げん【俳言】

はいごん(俳言)

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精選版 日本国語大辞典 「俳言」の意味・読み・例文・類語

はい‐ごん【俳言】

〘名〙 俳諧に用いられる語。俳諧に用いて、和歌や連歌などには用いない俗語・漢語などの称。貞門俳諧では特に重視された。はいげん。
※俳諧・毛吹草(1638)一「一句連哥にして誹言につまりたる時に」

はい‐げん【俳言】

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改訂新版 世界大百科事典 「俳言」の意味・わかりやすい解説

俳言 (はいごん)

俳諧用語。俳諧の制作に用いることばのうち,俗語,日常語,ことわざなど和歌・連歌に嫌うことば,音読する漢語,鬼,女,竜,虎,狼など千句連歌に一度だけ使用を許された耳立つことばをいう。〈俗言(ぞくごん)〉〈ただごと〉〈ひらことば〉ともいう。俳文芸ジャンルの確立をめざす貞徳は,〈抑(そもそも)はじめは誹諧と連歌のわいだめ(区別)なし。其の中よりやさしき詞(和語歌語)のみをつゞけて連歌といひ,俗言を嫌はず作する句を誹諧といふなり〉(《御傘(ごさん)》)と,用語のうえから俳諧,連歌を区別した。彼はまた俳諧を,俳言を賦物(ふしもの)とする連歌にたとえたという(季吟著《増山の井》)。これらは一見形式主義的にみえるが,和語・歌語になじんだ連歌の様式に漢語・俗語を投げこんだときに生じる違和感,滑稽感や,日常語がにないこんでくる現実性,通俗性などは,俳諧の本質にほかならず,その証拠に,俳言は俳意(俳諧性)と同義に用いられることが少なくなかった。しかし,社会の上下両階層をかかえこむ貞門では,新俗に過ぎる俳言の使用を禁じたため急激に下降し,拡大する作者層の要求にこたえることができず,俳言の規制質量ともに撤廃した談林俳諧流行を招いた。談林は俳言の通俗性を最大限にふくらませ,歌語までもそれに同化吸収せしめたが,そこから出た芭蕉は,“俗語を正す”理念を掲げ,俳言を詩語へと昇華させることによって,俳諧文学の革命を遂行した。
貞門俳諧
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