住宅地計画(読み)じゅうたくちけいかく

改訂新版 世界大百科事典 「住宅地計画」の意味・わかりやすい解説

住宅地計画 (じゅうたくちけいかく)

都市および都市周辺で居住地区を計画的につくりだすことをいうが,近・現代の都市では住宅地は住宅団地ニュータウン,住宅地再開発などの計画建設を通じて形成される。都市において住宅用地は大きな部分を占めており,住宅地の内容や形成の態様は都市の性格等に決定的な影響を及ぼす要素の一つである。住宅地計画は,(1)社会的,文化的,機能的な構造としての地域社会集団の形成を図り,(2)個人,家族,地域集団から生ずる都市生活にとってより望ましい居住環境の総体をつくることを目標としている。(1)については,個人が位置づけられ生かされるコミュニティの形成が図れる場を用意することになる。このような目標を達成するための四大規範は,(a)健康,(b)安全,(c)利便,(d)快適さである。通常この規範ごとの具体的項目ごとに用意された基準,標準,設計要領等に照らしながら計画設計は行われる。なお,これらの規範の内容は,(a)健康は,生活に必要な日照採光通風,静かさなどを確保し,有害な空気やにおいや,害虫などを除くこと,(b)安全は,交通事故や火災などの危険を生じにくくし,犯罪などを防ぐ保全面の配慮を行うこと,(c)利便は,消費,通勤,教育,医療保健,文化活動,スポーツ活動などの社会生活が能率的にかつ効果的に行えるように住宅地を理論的に構成すること,(d)快適さは,主として住宅地の美観をつくることであり,また開放感,落着きや,潤いといった心地よさを醸成すること,である。

 住宅地の基本的構成要素は,住宅用地,公共施設あるいは社会施設などの建築用地,公園緑地,交通用地などである。それぞれの用地における各種施設の配置計画と設計がなされ,そしてそれらの総合化されたものが住宅地空間である。この地域社会に対応する計画の基本には,そこに住む人々の年齢・世帯人数構成,就業構成などの人口計画がある。人口計画やその空間配置に対応させながら,住宅用地の空間計画がある。それは,計画密度と,住宅の規模(1戸当りの面積)や形式(戸建,低層住宅,中高層住宅などの)による住宅型構成と配置計画などが基本であり,一方で,人口構造に見合った住宅団地以外の用地や各種施設を設け配置される。住宅地空間を都市市街地に位置づけ総合化するには,人口規模などの計画規模に応じ,住宅用地とともに社会施設,公園,道路を具体的な手法を用いて構成する必要がある。すなわち,地域社会を住宅街区,近隣分区,近隣住区,地区,都市といった大きさに応じて計画の構成を行う。現在までの日本の都市構成の単位は,徒歩圏内をめざした人口1万人前後の1小学校を中心とする近隣住区単位が基本とみてよい。この単位をもとに,住宅地を構成する手法が近隣住区理論である。図1に示した大阪の千里ニュータウンは,上下の各単位の規模を含めて,近隣住区理論で計画された実現例である。住宅地の社会施設は生活圏の段階ごとに設けられる。これを施設の段階構成計画理論といい,普通近隣住区理論の集団規模段階と対応関係をもつ。住宅地をこのような各段階の計画単位によって構成する手法は,都市を細胞単位で一律的に構成しやすいといわれる。これに対して,近年いくつかの実験によって現代生活に合った住宅地計画が追求されている。

 以下はいずれもイギリスの例であるが,(1)都市生活における田園らしさを保ちながら,現代の都市らしさを強調した計画がある。多くの社会施設を軸状のセンターに集中化し,このセンターの周りに通常より大きい住居群規模をまとめた街区(スーパーブロック)を直結して,歩車分離方式により住宅から徒歩圏内で都市的なセンターと自然に恵まれたオープン・スペースとに出入りしやすくした都市がある(ロンドン南西のフック・ニュータウン,1961年に計画発表)。(2)また,良好な自然的・社会的・歴史的環境条件を達成し,都市における生活要求と社会関係の選択性を広げ,高水準のアメニティを達成し,都市の柔軟性と成長性をもたせた住宅地計画がめざされている。その一つとして,対面的なコミュニティが保証される住居群単位(100~200人)が集まった小規模学校区単位(約2000人)を4個集めてその中心にローカル・センターを設け,それを公共運輸機関で連結・連環させ,自家用車利用層以外の人々の移動のしやすさも確保した計画がある(図2,リバプール南方のランコーン・ニュータウン,1967年に計画完了,建設中)。あるいは社会施設の利用圏をオーバーラップさせるなどの手法もある。さらには,都市域を格子状道路網で区分し,別に歩行者専用路や緑のルートの網目を設けて組み合わせ,各スーパーブロックに特徴をもたせ,徒歩や自動車などによる移動によって社会生活の機会と社会関係の厚みを増して現代コミュニティを形成しようとする手法もある(ロンドン北方のミルトン・ケインズのニューシティ,1970年に計画完了,建設中)。以上は大きな住宅地の構成についての基本的な計画例である。さらにスーパーブロックや近隣住区以下の単位にもそれぞれ設計手法があり,これらを用いて住宅地計画の目標は実体化される。
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