伎楽面(読み)ギガクメン

デジタル大辞泉 「伎楽面」の意味・読み・例文・類語

ぎがく‐めん【伎楽面】

伎楽に用いた仮面舞楽面能面よりも大きい。正倉院法隆寺東大寺などに現存

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精選版 日本国語大辞典 「伎楽面」の意味・読み・例文・類語

ぎがく‐めん【伎楽面】

〘名〙 伎楽で舞人が用いた仮面。多くは桐材でつくられ、型は能楽の面よりもかなり大きく、頭のうしろを布でかくして深くかぶるようにして用いた。獅子金剛迦楼羅(かるら)崑崙(こんろん)力士婆羅門、酔胡従(すいこじゅう)などの面が、正倉院や法隆寺などに現存する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「伎楽面」の意味・わかりやすい解説

伎楽面
ぎがくめん

伎楽用の仮面。推古 20 (612) 年,百済の味摩之 (みまし) が将来したといわれる。法隆寺に伝えられた引面 (東京国立博物館,法隆寺宝物館) ,東大寺大仏開眼会 (752) に用いられたという正倉院の 164面,東大寺の 33面などが現存し,世界最古の仮面といわれる。これらの面作者として,遺作在銘の将李魚成 (しょうりのうおなり) ,基永師,延均師,捨目師,財福師が知られる。舞楽面や能面より大型で後頭部をおおうようになっている。伎楽面は諸記録により約 1000種あったことが知られ,治道,呉女,婆羅門など異なった表情を写し,鳥や獅子などを表わすものもある。材料は乾漆もあるが,くすのき,ひのき,きりが主。丹,朱,緑青を塗り,髪や眉,ひげを植毛したものもある。

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百科事典マイペディア 「伎楽面」の意味・わかりやすい解説

伎楽面【ぎがくめん】

伎楽に用いられる面。治道(ちどう),獅子,呉公(ごこう),金剛(こんごう),迦楼羅(かるら),崑崙(こんろん),呉女(ごじょ),力士,婆羅門(ばらもん),大孤(たいこ),酔胡(すいこ)など多くの種類がある。帽子のようにかぶるので後頭部まで造られ,大きいのが特徴。法隆寺,東大寺,正倉院などに木彫あるいは乾漆製の面が230近く伝わっており,捨目師(すてめし)や基永師(きえいし)などの作者名も知られている。
→関連項目仮面

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「伎楽面」の解説

伎楽面
ぎがくめん

伎楽に用いられた仮面。治道(ちどう)・師子児・呉公・呉女・迦楼羅(かるら)・金剛(こんごう)・力士・婆羅門(ばらもん)・崑崙(こんろん)・大孤父(たいこふ)・大孤児・酔胡(すいこ)王・酔胡従面などのほか獅子頭がある。仏教関係や中国・西域・インド地方の容貌が多い。奈良時代には法隆寺・西大寺の資財帳にみえ,法隆寺には飛鳥・白鳳期から奈良時代の作品32面が現存(31面は東京国立博物館蔵)。東大寺などには752年(天平勝宝4)の大仏開眼供養会に使用されたものなど,奈良時代以降の200面以上が伝存し,このうち正倉院には171面を収蔵。平安時代の史料では広隆寺,筑前国観世音寺,上野国の諸定額寺の資財帳にみえ,地方への伝播もうかがえる。

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世界大百科事典(旧版)内の伎楽面の言及

【仮面】より

…歴史時代の大陸文化の渡来とともに出現する演技用仮面までの仮面の空白期間は,仮面儀礼の欠如を示すものか,今後検討を要する。【田中
[諸芸能にみる日本の仮面]
 日本の仮面は,原始時代の呪術的な土製仮面から一つの断絶をへて急に発展した歌舞・演劇的な伎楽面(伎楽)に移行する。6世紀ころ,仏教文化の渡来とともに日本にもたらされた伎楽は,当時の中国大陸で,西方起源らしいあとを残しながら形成されたものと考えられ,日本では7~8世紀を通じて,宮廷とおもな寺院に拠って栄えたが,やがてその地位を舞楽に明け渡す。…

【伎楽】より

…ただ《獅子》《呉公》《大孤》の笛パートは林謙三(1899‐1976)によって復元され,レコード化されている(《天平・平安時代の音楽――古楽譜の解読による》,日本コロムビア,1965)。雅楽【田辺 史郎】
[伎楽面]
 狭義の伎楽には各種の伎面が用いられている。古代に伎楽具を蔵していた奈良の法隆寺や東大寺,西大寺,京都の広隆寺,福岡観世音寺などの記録や遺品から分類すると,その一組はおよそつぎの14種,23面となる。…

※「伎楽面」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」