人工重力(読み)ジンコウジュウリョク(英語表記)artificial gravity

デジタル大辞泉 「人工重力」の意味・読み・例文・類語

じんこう‐じゅうりょく〔‐ヂユウリヨク〕【人工重力】

無重量状態が人間に与える影響をなくすために、人工的に作り出される疑似重力宇宙船などを回転させて得られる遠心力により発生させる。

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改訂新版 世界大百科事典 「人工重力」の意味・わかりやすい解説

人工重力 (じんこうじゅうりょく)
artificial gravity

重力とは地球上の静止物体が受ける地球の引力と地球自転による遠心力との合力である。遠心力は赤道上でもっとも大きくなるが,そこにおいてさえ地球引力の1/290にすぎないから,重力のほとんどは地球の引力である。宇宙船がエンジンを作動しない状態で飛行を続けているときは,特定惑星を中心とする求心運動を行っており,この場合,惑星引力と宇宙船運動による遠心力はつり合っている。地球周回運動をする宇宙船では地球引力と遠心力がつり合っており,地球引力圏を脱出して火星などの惑星に向かう宇宙船では太陽引力と遠心力がつり合っている。このような状態での宇宙船内は無重量状態にあるが,人間が宇宙船内で地球上と同じように生活するためには,地球上と同じような重力が作用していたほうが生活しやすいと考えられている。この場合には,重力に相当する加速度を人工的に宇宙船内に作り,それによる力を利用することが考えられている。これが人工重力と呼ばれるものである。遠心力を利用して加速度を人工的に宇宙船内に作ることがもっとも一般的な方法で,直径100mの円筒を毎分4.23回転で円筒軸を中心にして回転すると,円筒内面壁上に垂直に重力に相当する遠心力が外向きに働き,円筒壁上の人間は地上と同じように生活できることになる。宇宙ステーションが構想された初期には,無重量状態の人体への影響の危険性も重要な問題として取り上げられ,回転する宇宙ステーションが考えられていた。しかし現在では長期宇宙飛行の経験から,4ヵ月程度は無重量状態下でも問題はないとされている。
無重量状態
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「人工重力」の意味・わかりやすい解説

人工重力
じんこうじゅうりょく
artificial gravity

宇宙船の中のような無重量の世界で,人工的につくりだされる重力のこと。 1966年9月 14日,アメリカのジェミニ 11号は,無人のアジェナを長さ 30mのロープで結んでぐるぐる回転させ,初めて人工重力をつくり出した。回転によって生じた遠心力が人工重力となって働くからである。長期間,無重量状態におかれると,心臓の活動が弱まり,カルシウムが血液中に流れ出すなどの障害が起るので,宇宙ステーション内での長い生活や,有人惑星間飛行などでは,人工重力をつくる必要がある。

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