引力
いんりょく
互いに引き合う力を引力といい、互いに反発する力を斥力(せきりょく)という。また物質間に働く重力はつねに引力であるため、重力のことを単に引力とよぶ場合もある。万有引力ということばは重力をさす。
空間的に離れた物質の間に働く作用を「力」としてとらえるのは、ニュートン力学により確立した考え方で、このときに認識されていた「力」は、地球と物体、地球と月、太陽と惑星の間の引力である。こうした歴史的経過のため、力の概念そのものと引力とが同一にみられる場合がある。しかし、引力と斥力がある電気、磁気の力にも、さらには原子核を構成する陽子、中性子間に働く核力にも、この力の概念は適用できる。素粒子間の相互作用は正確には場の量子論により記述され、この次元では引力、斥力という概念はもはや有効でない。しかし、場の量子論を用いて力を近似的に構成することはでき、直観的にわかりやすい引力、斥力の概念は現在でも物理学で有用である。
[佐藤文隆]
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いん‐りょく【引力】
〘名〙
※暦象新書(1798‐1802)中「一、引力、
動力、求心力、
速力等の名は、義訳に出たり」
② 人をひきつける力。人の心を引きつけるような魅力。
※江戸繁昌記(1832‐36)五「但だ
其の金と女とを謂て、引力と做す」
[語誌]①の挙例「暦象新書」によりオランダ語 Aantrekkingkracht の
訳語と推測される。Aantrekking (引)+ kracht (力)=引力と当てたもの。幕末の「英和対訳袖珍辞書」には Attraction の訳語として載る。
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引力
いんりょく
attractive force; attraction
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デジタル大辞泉
「引力」の意味・読み・例文・類語
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いんりょく【引力 attraction】
二つの物体が及ぼし合う力のうち,物体を互いに近づけるような向きに働くものをいう。反対に遠ざけるような向きに働くものは斥力repulsive forceという。引力のうちもっとも普遍的なのは万有引力であり,電気(あるいは磁気)を帯びた物体間に働く静電気力(磁気力)も,異符号の電気間(磁極間)では引力になる(同符号の場合は斥力)。また,原子核を構成する核子の間に働く核力も引力である。なお,綱などを通して引き合う力の場合は張力と呼ぶのがふつうである。
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