世尊寺跡
せそんじあと
平安中期の公卿藤原行成建立の寺院。「拾芥抄」に「一条北、大宮西、本小路東、無
路南」とあり、一条の北、大宮の西、現在の京都市上京区栄町辺りに位置した。世尊寺は藤原行成の邸宅を寺院化したものであるが、もとこの邸宅は清和天皇の第六子貞純親王の邸宅であった。邸宅が桃園の地にあったので貞純親王は桃園親王といわれた。桃園という地名は「延喜式」内膳司に記載されている京北園に由来する。京北園は天皇供御の果実や蔬菜類を栽培した菜園（御園）で、主として桃の木を植えたことによる。
「後拾遺集」に、
＜資料は省略されています＞
という歌が収められる。邸は醍醐天皇皇子代明親王、その子源保光（桃園中納言）、藤原師氏（桃園大納言）、その子の主殿頭近信に伝領され、その後桃園の邸は師氏家から師輔長子伊尹家へと移った。
邸が行成に伝領されたのは、代明親王の女が伊尹に嫁し義孝をもうけ、保光の女が義孝に嫁し行成が生れたという婚戚関係による。
世尊寺跡
せそんじあと
[現在地名]吉野町大字吉野山小字子守
子守の集落、民家のすぐ上にあった寺で、鐘楼だけが残る。背後の山を天竺の霊鷲山にならい鷲尾山という。創建については不詳であるが、現存の梵鐘が保延六年（一一四〇）鋳造とある点から平安期を下らないことは確実。本尊は釈迦如来、脇士は迦葉・阿難尊者であったが、現在はいずれも蔵王堂（金峯山寺）に安置されている。「和州旧跡幽考」や「大和名所図会」は、「日本書紀」欽明天皇一四年五月条にみえる河内国茅淳海中の樟木で刻んだ仏像が創建当時の仏像というが不詳。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
