不倶戴天(読み)フグタイテン

デジタル大辞泉 「不倶戴天」の意味・読み・例文・類語

ふ‐ぐ‐たいてん【不×倶戴天】

《「礼記曲礼の「父のあだともに天をいただかず」から》ともにこの世に生きられない、また、生かしてはおけないと思うほど恨み・怒りの深いこと。また、その間柄。「不倶戴天の敵」

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精選版 日本国語大辞典 「不倶戴天」の意味・読み・例文・類語

ふ‐ぐ‐たいてん【不倶戴天】

〘名〙 (「礼記‐曲礼上」の「父之讎、弗与共戴一レ天、兄弟之讎、不兵、交遊之讎、不国」による語。ともに天をいただかずの意から) 相手をこの世に生かしておかないこと。殺すか殺されるか、いっしょには生存できない間柄であること。怨みや憎しみが深く報復せずにはいられないこと。また、そのような間柄。
※歌舞伎・四十七石忠矢計(十二時忠臣蔵)(1871)序幕「不倶戴天(フグタイテン)の志」

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四字熟語を知る辞典 「不倶戴天」の解説

不倶戴天

この世にともに生きていられないほど、深い恨みや怒りを感じる相手を形容することば。

[使用例] 何はともあれこのあたしを犬猫か虫ケラのようにぶった斬っておしまいになったお前様、あたしにとっては不倶戴天のしゅうてきにはちがいございません[山田風太郎*ワンインカン|1949]

[使用例] 小さいくせに総毛だつような不倶戴天の敵、アブラムシ新芽という新芽にびっしりとたかってくる[北杜夫*どくとるマンボウ昆虫記|1961]

[使用例] アルジェリア人にとって、O A Sは、そうしてO A Sにとってアルジェリア人は、ともに不倶戴天の敵ということになろう[堀田よし*あるヴェトナム人|1964]

[解説] 「ともてんいただかず」と訓読します。中国・戦国時代の「らい」から出たことばです。原典では少し文章が違って、「父のあだは、に天をいただかず」(=父親のかたきと同じ天をいただくことはできない)と書いてあります。
 これはあだちの方法を述べた文章です。父親のかたきと同じ天の下に生きていてはならない、探し求めて必ず殺せ、と言っています。
 文章はさらに続きます。兄弟のかたきを見つけたときは、武器を取りに帰ったりせず、その場で殺せと教えます。一方、友人のかたきについては、同じ国に住むな、と説くだけです。相手が国外に逃げたら、追わなくていいそうです。
 現代では、同じ世界に生きていたくないほど憎い敵の形容に使います。ところが、芥川龍之介は、なぜかこれを「不具退転」と書き、「絶対退かない」の意味で使っています(「続しょう雑記」)。
 それを言うなら「不退転」(=信念を持って、後に引かないこと)です。文豪も思わず勘違いしたようです。

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