三蔵(仏教聖典)(読み)さんぞう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「三蔵(仏教聖典)」の意味・わかりやすい解説

三蔵(仏教聖典)
さんぞう

経・律・論を収めた仏教聖典。サンスクリット語トリピタカtripiaka、パーリ語ティピタカtipiakaの訳。ピタカとは蔵あるいは籠(かご)の意で、ティピタカとは三つの籠のこと。すなわち、仏教の聖典には、仏陀(ぶっだ)(釈迦(しゃか))の説いた教法たる経と、出家の修行者の守るべき規矩(きく)たる律と、両者に対する注釈的研究たる論があり、この経律論の三つを収めたものという意味で、三蔵といえば、仏教聖典の総称のことである。伝説によれば、仏陀入滅の後、弟子たちが集まって三蔵を結集(けつじゅう)したといわれるが、論蔵の成立は明らかに後代のことであり、また経や律にしてもその成立には長い時間を要したものと考えられる。仏教の各部派はそれぞれ固有の三蔵を保持していたと思われるが、今日もっとも完全な形態で残っているのは、スリランカに伝わった上座部テーラワーダTheravādaのパーリ語三蔵である。また三蔵に通暁(つうぎょう)した学僧のことを三蔵法師といい、とくに玄奘(げんじょう)三蔵をさす。

高橋 壯]

『前田恵学著『原始仏教聖典の成立史的研究』(1964・山喜房仏書林)』

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