日本大百科全書(ニッポニカ) 「三方(膳の一種)」の意味・わかりやすい解説
三方(膳の一種)
さんぼう
衝重(ついがさね)といわれる膳(ぜん)の一種で、ヒノキの白木でつくった折敷(おしき)を、三面に眼象(げんじょう)(刳形(くりがた))のある台の上に取り付けたもの。もとは食事用の台にしたが、現在は神祭に神饌(しんせん)などをのせる台や容器としたり、各種儀式に物をのせる台となっている。各家庭では、神棚への供物、正月の床飾(とこかざ)り(鏡餅(かがみもち)、蓬莱(ほうらい)など)、屠蘇(とそ)の祝いの台・容器として使っている。白木が原形だが、黒または朱塗りのもの、蒔絵(まきえ)を施したものがある。使用には、折敷の側板の綴目(とじめ)がなく、台に刳形がないほう(台の側板の綴目があるほう)を表とし、この面を神前、貴人に向けて置く。衝重には三方と、台の四面に刳形のある四方、刳形がない供饗(くぎょう)とがあった。『三光院内府記』(安土(あづち)桃山時代)には、大臣以上が四方、大納言(だいなごん)以下は三方、六位蔵人(くろうど)は細縁の三方を用いるとあるが、この時代には武家や庶民の間でも三方は使われていた。なお、伊勢(いせ)神宮の神楽(かぐら)殿では丸三方といい、浅い盆形の曲物(まげもの)に円筒形の曲物の台をつけたものが用いられている。ただしこれには刳形がない。
[小川直之]
『岩井宏實・日和祐樹著『神饌』(1981・同朋舎出版)』