神楽(読み)かぐら

精選版 日本国語大辞典 「神楽」の意味・読み・例文・類語

かぐら【神楽】

〘名〙 (「神座(かむくら)」の変化した語)
① 神をまつるために神前に奏する舞楽。平安時代にその形が整えられた。楽器は和琴(わごん)、大和笛、笏拍子(しゃくびょうし)の三つを用いたが、のちに篳篥(ひちりき)が加わった。楽人は庭上の左右に本方(もとかた)、末方(すえかた)の座に分かれ、神楽歌をうたい楽器を奏する。舞人が舞を舞うが、人長(にんじょう)は、榊(さかき)、幣(みてぐら)、杖(つえ)などの採物(とりもの)を持って舞う。一二月に行なわれた内侍所(ないしどころ)の御神楽(みかぐら)が最も代表的なもので、その他、貴族の神祭にも夜、庭燎(にわび)をたいて行なわれた。神遊(かみあそび)。《季・冬》
古語拾遺(807)「猿女君氏、神楽(かぐら)の事を供(たてまつ)る」
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「かくて、十一月になりて、御かぐらし給ふべきまうけし給ふ」
② 諸社、民間に行なわれる芸能。すなわち、巫女が舞う巫女神楽、神話・伝説を黙劇または科白劇で演じる里神楽・太太神楽(だいだいかぐら)、清めの湯をふりかける湯立神楽、家ごとに獅子頭をまわし息災延命を祈る獅子神楽など。《季・冬》
※俳諧・毛吹草(1638)二「中冬〈略〉神楽里神楽
③ 能の舞の一種、およびその伴奏の器楽の名。神、天女、巫女などの役の者が巫女神楽にまねて舞うもの。主としてシテが、また、時としてツレも舞う。
※三道(1423)「物まねの人体の品々、天女・神女・乙女、是、神楽の舞歌也」
④ 狂言の囃子と舞。巫女が鈴と扇を持って舞うもので、笛、小鼓で演奏する。能の神楽とは別物で、祈祷の気分を持ち、民俗芸能的な味わいをも感じさせる。「石神」「太鼓負」「大般若」で用いられる。
⑤ 歌舞伎の囃子鳴り物の一つ。能の囃子から歌舞伎の下座(げざ)音楽に移されたもので、能管、太鼓、大太鼓ではやす。
※歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)一「ト神楽に成り、〈略〉神主・仕丁を連れ、鳥井の内へ這入」
⑥ 平屋(ひらや)の上へ二階を建て増したもの。おかぐら。〔東京語辞典(1917)〕
ひょっとこのような顔。また、その人。〔東京語辞典(1917)〕
⑧ 古来日本で栽培されていたワタの栽培品種の一つ。東洋の在来種であるアジアワタで、花色が黄色または白色のものをいう。神楽綿。
農業全書(1697)六「木綿は〈略〉其たね色色ある中に、白花のかぐら、黄花のかぐら、是すぐれたるたねなり」

かみ‐がく【神楽】

〘名〙 能楽の舞の一つ。「翁(おきな)」で、シテの翁が舞う舞。小鼓三つではやし、笛があしらう特殊な舞。翁役を神になぞらえたもの。翁の舞。

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デジタル大辞泉 「神楽」の意味・読み・例文・類語

かぐら【神楽】

《「かみくら(神座)」の音変化》
神をまつるために奏する舞楽。宮中の神事芸能で、先行の琴歌神宴きんかしんえんなどに、石清水八幡いわしみずはちまんなどの民間の神遊びを取り込み、平安時代に内侍所御神楽ないしどころみかぐらとして完成。楽人は左右の本方もとかた末方すえかたの座に分かれ、歌い奏し、主要部分では舞を伴う。御神楽みかぐら
諸社、民間の神事芸能で、神を迎え、その御魂を人々の体内にいわいこめる一連の儀礼中に行われる歌舞。採物とりもの神楽(出雲いずも神楽巫女みこ神楽)・湯立ゆだて神楽伊勢神楽)・獅子しし神楽など、多くの系統がある。 冬》
の舞事の一。女神・巫女などが幣束を持って優美に舞う。また、その囃子はやし。笛を主に、大鼓・小鼓・太鼓が特有の神楽の譜で演奏される。
狂言の舞事の一。また、その囃子。笛と小鼓の囃子で、巫女が鈴と扇を持って舞う。の神楽とは別の曲。
歌舞伎下座音楽の一。能管・太鼓・大太鼓ではやす。3からの流用で、時代物の神社の場面などに用いる。本神楽。

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改訂新版 世界大百科事典 「神楽」の意味・わかりやすい解説

神楽 (かぐら)

神前で神をまつるために演じられる神事芸能で,奏楽,唱歌,舞踊,演劇などさまざまな芸態がある。〈かぐら〉というよみ方については,神座(かむくら)の音韻転化とする説(折口信夫)が定説化している。神楽の字の用例は《万葉集》の諸歌に〈神楽波(ささなみ)の滋賀〉などとあり,〈ささ〉とよむこともあった。これには鎮魂の呪具たる採物(とりもの)の笹の葉ずれの音(本居宣長)とか,鈴の音(本田安次)などの説があるが,神事芸能を内容とする初見は807年(大同2)撰の《古語拾遺》の〈猨女(さるめ)君氏,供神楽之事〉である。しかし神楽の文字が使われ出すのは石清水(いわしみず)八幡宮の初卯の神楽や,賀茂神社臨時祭の還立(かえりだち)の神楽のように9世紀末から10世紀初頭にかけてである。宮中では先行神事芸能としての琴歌神宴が行われており,10世紀に入って御遊(ぎよゆう)ないし御神楽(みかぐら)が清暑堂において行われ,1002年(長保4)に内侍所(ないしどころ)御神楽が成立した。この宮中における神楽については〈御神楽〉の項目を参照されたい。

 神楽は本質的には招魂の鎮魂(たましずめ)作法であり,歌舞を演ずる楽(あそび)の形式をとった。神遊(かみあそび)の歌(《古今集》)の用例もあり神楽を〈かみあそび〉(《神楽歌考》)と呼んだ可能性もある。招魂思想には天の岩屋戸(あまのいわやど)神話の天鈿女命(あめのうずめのみこと)の作法(わざ)を唱導した猿女氏のもの,平安以降宮中鎮魂祭の主体となった天饒速日命(あめのにぎはやびのみこと)の降臨神話による物部氏のもの,神功皇后の新羅攻めの説話にちなむ阿度部磯良(あどべのいそら)の安曇(あずみ)氏のものなどがあるが,内侍所御神楽の基本となったのは石清水八幡宮を経た八幡系の安曇氏の鎮魂作法だったようである。
神楽歌

御神楽以外の民間の神楽を里神楽と総称するが,別して江戸で発達した神楽を1874年(明治7)から郷(里)神楽と呼ぶようになった。民間の神楽は全国津々浦々に散在し,おびただしい数にのぼる。そしてあたかも猿(猨)女君氏の唱導であるかのように岩戸神楽神代神楽の名を冠するものが多い。しかしなお民間の神楽には踏鎮めによる悪霊の鎮魂作法をもつ修験道の参画をみたものが少なくない。こうして民間の神楽は複雑になり,西角井正慶,本田安次,三隅治雄らによってそれぞれ分類法が示された。それらを統合して考えると,巫女神楽,採物神楽,能神楽,湯立神楽,獅子神楽に大別されよう。

 (1)巫女は舞による神懸りで託宣に及ぶもので,天鈿女命にその原型を見るが,今日の巫女舞は静かで優雅な舞が多い。春日大社の社伝の神楽,美保神社の朝神楽・夕神楽の巫女舞などが代表的なものである。(2)採物神楽と能神楽は対になっている場合が多く,その最も古い典型が出雲の佐陀(さだ)神社の七座の神事と神能(佐陀神能)で,この形式のものを出雲流と呼び,中世末から近世初頭の初発である。この流派が最も広く分布しているが,高千穂神楽では採物神楽に傾き,江戸の里神楽では神話のことごとくを黙劇に仕組むというように能に傾いている。(3)湯立神楽は神聖な湯花に触れて祝福を得ようとするもので,伊勢神宮外宮(げくう)の御師(おし)と呼ぶ外勤神職団によって広められ,伊勢流と呼ばれているが,今は伊勢になく,秋田県横手市の保呂羽山波宇志別神社の霜月神楽や愛知県の花祭などに残されている。湯釜をすえて神々を勧請(かんじよう)し,数々の潔(きよ)めの舞を舞い,ときには見物人に湯花を振りかけるのである。(4)獅子神楽は獅子頭(ししがしら)を権現(神の仮託した姿)とあがめ,潔め鎮(しず)めの獅子舞を舞わせたのち,数々の余興を演ずる。岩手県の山伏神楽などでは能楽大成以前と目されるような古風な能舞や狂言を演じ,伊勢大神楽などのいわゆる太(だい)神楽では散楽系の曲芸や滑稽を演じてみせる。太々(だいだい)神楽,代々神楽の名称には規模の大きさ,美称,代参(信者講中の参加者による)などさまざまな意味が含まれている。

 神楽人は本来神職が演じることが多かったが,明治維新以後は在来の神事舞太夫の列に加わって民間人が演じているところが多い。神楽の舞台は拝殿,神楽殿などのほか仮設の舞台,民家の座敷・土間などさまざまであるが,出雲流の岡山県の備中神楽や広島県の備後神楽では神殿(こうどの)と呼ぶ特設の舞処を設け,天蓋(てんがい)飾をつける。天蓋飾は高千穂神楽や花祭にも顕著で,陰陽道,修験道の影響を色濃く宿している。
神楽面
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神楽 (かぐら)

能および狂言の用語。(1)能の囃子事。巫女や女体の神などが舞う舞事。《三輪》《竜田》《巻絹》などに用いる。笛,小鼓,大鼓,太鼓で奏演し,笛のリズムは打楽器のリズムに合う。普通,前半の純神楽部分と後半の準神舞(かみまい)部分とに分かれるが,その接続のしかたには,で接続する〈段直リ〉と,で接続する〈地直リ〉の2種がある。純神楽部分では笛は固有の旋律を吹き,小鼓も〈神楽地〉という特殊な地を打ち,多く幣をもって舞い,優美にリズミカルに奏演される。準神舞部分は扇で舞い,爽快によどみなく奏演される。純神楽部分で終始するものに〈総神楽〉〈二段神楽〉などがある。(2)狂言の囃子事。巫女が鈴をもって舞う舞事で,笛,小鼓で奏する。笛は2句の旋律を繰り返し,小鼓は乙だけを打ち続けるが,両者のリズムは合う。能の神楽とは別物で,所作は《式三番》の〈鈴ノ段〉を模したもの。《石神(いしがみ)》《大般若(だいはんにや)》などに用いる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「神楽」の意味・わかりやすい解説

神楽
かぐら

神を勧請し,神と人とが酒食をともにして歌舞する鎮魂呪術。またこのとき行なわれる神事芸能も神楽の名で呼ぶ。一般に,語源は神座(かむくら)の約音とされる。宮廷で行なわれる御神楽(みかぐら)と民間で行なわれる里神楽がある。
(1) 御神楽 内侍所御神楽ともいい,平安時代に始まった。毎年 12月中旬,宮内庁楽部の楽師によって,宮中賢所の前庭で庭燎を焚いて行なわれる。神楽歌を独唱,斉唱することが主体で,今日では庭火,韓神(からかみ),千歳,早歌,其駒など 12曲を,神楽笛篳篥和琴笏拍子を奏してうたう。全体を人長(にんじょう)が統率し,韓神と其駒の曲では人長がサカキの枝に輪のついた採物を持っても舞う。
(2) 里神楽 その形態により (a) 巫女神楽,(b) 出雲流神楽,(c) 伊勢流神楽,(d) 獅子神楽などに分類される。(a) は巫女自身を神座とするもので,天岩戸の前で舞ったアメノウズメノミコトの舞が,その始源を語るとみられる。本来神憑りして託宣することを目的としたが,しだいに神憑りの前に舞う舞が儀礼化・様式化して,各地の大社などで行なわれている。(b) は島根県松江市鹿島の佐太神社の御座替祭(ござがえまつり)に発するとされる。御座替祭では素面の採物舞である七座神事と式三番,着面の神能が合わせてとり行なわれ,佐陀神能と総称される。今日,岩戸神楽,神代神楽などの名で呼ばれるものがそれで,高千穂神楽,伊予神楽,有田神楽,江戸神楽などもこれに属する。(c) は伊勢神宮で行なわれた湯立神楽(→湯立神事)がもとで,湯釜の周囲で素面,着面の舞が舞われる。愛知県東栄町や豊根村を中心とした花祭,長野県天龍村の冬祭,長野県飯田市などの霜月祭や,秋田県横手市にある保呂羽山の霜月神楽(→霜月祭)などがこれにあたる。(d) は獅子頭を御神体とし,お祓(→)や火伏せの祈祷をするもので,早池峰神楽などの東北の山伏神楽,番楽,能舞では,獅子が各戸を祈祷して歩いたのち,獅子舞のほか能風の曲が演じられる。ほかに伊勢や尾張の太神楽など。
(3) の囃子事(→囃子)の一つ。女神または巫女の舞の伴奏音楽。能笛,小鼓大鼓によって奏される。

神楽
かぐら

北海道旭川市南部の文教・住宅地区。旧町名。 1968年旭川市に編入。忠別川,美瑛 (びえい) 川にはさまれた標高約 150mの洪積台地上に開けた新市街地で,旭川医科大学,神楽岡ニュータウンなどがある。忠別川にのぞむ台地の北端に,神楽岡公園,上川神社がある。

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百科事典マイペディア 「神楽」の意味・わかりやすい解説

神楽【かぐら】

(1)宮中で,夜,庭燎(にわび)をたいてとり行う宗教儀式。一連の所作と声楽主体の音楽とからなる。伴奏には和琴・神楽笛・笏拍子などの日本古来の楽器のほかに,篳篥(ひちりき)が用いられる。楽人は本方(もとかた)と末方(すえかた)とに分かれて並び,人長(にんぢょう)が全体を統轄する。神楽の起源はきわめて古いと想像されるが,形式が整えられて毎年行われるようになったのは平安時代中期であり,賀茂神社・石清水八幡宮などの神社・神宮でも行われた。しかもほかの祭祀(さいし)音楽がすべて一度は伝統が断絶しているなかで,神楽のみは連綿と受け継がれてきた。民俗芸能の神楽と区別するために御神楽(みかぐら)ともいう。(2)日本の民俗芸能の一種。〈おかぐら〉と呼ばれて各地に分布。本来は神官や巫女(みこ)などが神がかり状態で鎮魂や託宣を行うものであったが,そこに田楽(でんがく)や猿楽(さるがく)などの要素を取り入れて,出雲流神楽,獅子神楽,湯立神楽などさまざまの種類のものができた。これらを里神楽と総称して(1)と区別する。→岩戸神楽
→関連項目雅楽劇場花祭(民俗)巫女/神子

神楽【かぐら】

北海道中央部,上川郡の旧町。1968年旭川市に編入。忠別川と美瑛川にはさまれた地で,米作農業が発達し,富良野(ふらの)線が通じる。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「神楽」の解説

神楽
かぐら

神事の歌舞。宮廷などの御神楽(みかぐら)と民間の里神楽(さとかぐら)に大別される。起源は神を降臨させる際の神がかりの舞や神とともに飲食歌舞するなどの神遊びに求められる。宮廷では貞観年間(859~877)に豊楽院(ぶらくいん)の清暑堂での琴歌神宴が整備され,11世紀初頭にはこれをもとに賢所(かしこどころ)御神楽が成立して恒例化,おもに衛府官人が行った。また新嘗祭の前日の鎮魂祭には御巫女(みかんなぎめ)・猿女(さるめ)による神楽舞があり,「古語拾遺」は天岩戸での天鈿女(あめのうずめ)命の俳優(わざおぎ)に由来すると説く。御神楽はこのほか賀茂臨時祭の還立(かえりだち)の御神楽,石清水臨時祭の御神楽などがあり,賢所御神楽に影響を与えた。一方,里神楽はかぐら・おかぐらともよばれ,形態から巫女(みこ)神楽・出雲流神楽・伊勢流神楽・獅子神楽に分類される。

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旺文社日本史事典 三訂版 「神楽」の解説

神楽
かぐら

神を慰めるために行う神事芸能
①宮中の神楽は鎮魂を目的とした呪術から発達し,音楽・舞踊としてまとまった。現存する神楽歌は約90首。
②民間の神楽は里神楽と呼ばれ,祭礼のとき行われる。いろいろな系統があるが,仮面をつけ音曲に合わせて舞う形が多い。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「神楽」の解説

かぐら【神楽】

三重の日本酒。酒名は、伊勢神宮の神楽にちなみ命名。純米吟醸酒、純米酒、本醸造酒などがある。仕込み水は鈴鹿山系の伏流水。蔵元の「神楽酒造」は安政5年(1858)創業。所在地は四日市市室山町。

出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報

普及版 字通 「神楽」の読み・字形・画数・意味

【神楽】しんがく

かぐら。

字通「神」の項目を見る

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デジタル大辞泉プラス 「神楽」の解説

神楽

藤田湘子の句集。1999年刊行(朝日新聞社)。2000年、第15回詩歌文学館賞(俳句部門)受賞。

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世界大百科事典(旧版)内の神楽の言及

【芸能】より

…《古事記》や《日本書紀》所載の天の岩屋戸(あまのいわやど)における天鈿女(あめのうずめ)命の演じた俳優(わざおぎ)は,冬至のころ人と自然の生命力を更新させるために,植物を身につけた巫者が神がかりして鎮魂の所作や託宣を行った古代のシャマニズム儀礼の形を示している。大和朝廷では猿女(さるめ)氏や物部(もののべ)氏がこれを行い,のち芸能化して神楽(かぐら)の基を作った。大嘗祭に催された琴歌神宴(きんかしんえん)や平安朝中期以来12月の恒例行事となった内侍所御神楽(ないしどころのみかぐら)などがそれである。…

【民俗芸能】より

…盆には先祖供養と豊作を祈願して月光の下でおおぜいで歌い踊り,秋には無事収穫を祝い,かつ神に収穫の感謝を捧げての歌舞を盛大に演じる。太陽の衰える冬季を迎えると,衰弱した生命の復活再生を祈る鎮魂の神楽(かぐら)を演じる。これらのことを例年繰り返すことで,人の生命も田畑の実りも社会の繁栄も約束されると信じたのである。…

【舞事】より

…能の舞事には,笛(能管)・小鼓・大鼓で奏する〈大小物(だいしようもの)〉と太鼓の入る〈太鼓物〉とがあるが,その両者を含めて,笛の基本の楽句である(じ)の種類によって分類されることが多い。すなわち,呂中干(りよちゆうかん)の地といわれる共用の地を用いる〈序ノ舞〉〈真(しん)ノ序ノ舞〉〈中ノ舞(ちゆうのまい)〉〈早舞(はやまい)〉〈男舞(おとこまい)〉〈神舞(かみまい)〉〈急ノ舞〉〈破ノ舞(はのまい)〉などと,それぞれが固有の地を用いる〈楽(がく)〉〈神楽(かぐら)〉〈羯鼓(かつこ)〉〈鷺乱(さぎみだれ)(《鷺》)〉〈猩々乱(《猩々》)〉〈獅子(《石橋(しやつきよう)》)〉〈乱拍子(《道成寺》)〉などの2種がある。〈序ノ舞〉は女体,老体などの役が物静かに舞うもので,《井筒》《江口》《定家》などの大小物と《小塩(おしお)》《羽衣》などの太鼓物がある。…

※「神楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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