ワシントン(州)(読み)わしんとん(英語表記)Washington

翻訳|Washington

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワシントン(州)」の意味・わかりやすい解説

ワシントン(州)
わしんとん
Washington

アメリカ合衆国、北西端部太平洋岸の州。面積17万6616平方キロメートル。人口589万4121(2000)。州都オリンピア。北はカナダ、東はアイダホ州、南はオレゴン州、西は太平洋に面しており、南境をコロンビア川が流れる。地質的にはまだ若く、地域的には南北を走るカスケード山脈最高峰は4392メートルのレーニア山)を境に、3分の2の面積を占める東部と、西部に分かれる。東部は海抜150~180メートルのコロンビア溶岩台地が広がり、ほとんどが乾燥・砂漠地域であるため、スポーカンを除けば、主として農業収益に依存せざるをえない。しかし、豊富な水には恵まれ、北東部から南流して州南境を形成するコロンビア川はミシシッピ川に次ぐ流水量(河口部で毎秒7419立方メートル)を誇り、国内第3位の発電能力を有する重要水系である。ほかにスネーク川、ヤキマ川など重要河川をもち、グランド・クーリー・ダムを筆頭に、州内には90近い水力発電用ダムが建設されている。東部とは対照的に、西部はカスケード山脈西側にピュージェット・サウンド低地が、北西部には国内最大の大雨林地帯であるオリンピック半島が、南西部にはウィラパ丘陵と海岸平野が広がる。温暖湿潤の気候に恵まれる州西部には総人口の4分の3が集まり、とくに最大都市のシアトルタコマ、オリンピア、ベルビューエバレットなどの主要都市がピュージェット・サウンド低地に集中し、政治・経済・社会・文化の中心を形成する。

 木材、水産物鉱物などの豊富な天然資源が、古くから同州の産業の発達に大きなかかわりをもってきた。なかでも木材は18世紀から重要な地位にあり、現在でも製材パルプ製紙などの木材関連会社や工場が多い。また、現在州経済の大黒柱となっている航空・宇宙産業は、1940年以降工業化が進み、従業員7万人余を有するボーイング社がその要(かなめ)をなす。その他、食品加工業や安い電力を利用してのアルミニウム精錬、電気化学が発達し、金属、機械、印刷・出版などもある。農業は、東部を中心に小麦ジャガイモアスパラガス、リンゴ(全米第1位)やブルーベリーラズベリーなどの果樹栽培が行われる。また、牧畜も行われるほか、漁業はサケ漁を中心に、カキ、カニなどがとれる。

 16世紀中ごろから各国の探検隊が現れ始め、1805年にはルイスとクラークがコロンビア川を下り、太平洋岸に達した。イギリス、アメリカ共同統治を経て、1846年にワシントンを含むオレゴン地域は合衆国領となり、53年にはオレゴン準州から分かれてワシントン準州がつくられ、89年に第42番目の独立州に昇格した。ワシントン大学、シアトル大学をはじめ、州立大学、ゴンザガ大学、パシフィック・ルーテル大学、ホイットマン大学などがあり、また、マウント・レーニア、ノース・カスケード、オリンピックと3か所の国立公園を有することでも知られる。

[作野和世]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android