食の医学館 「小麦」の解説
こむぎ【小麦】
《栄養と働き》
〈米よりもビタミンB群、カルシウムが豊富〉
小麦(こむぎ)はイネ科の越年草で、主食とする国がもっとも多いため、生産量は食用作物中世界第1位です。
現在の小麦の発祥地は黒海からカスピ海のオリエントで、およそ1万年前から栽培されています。その歴史は古く、人類最初の作物ともいわれています。
○栄養成分としての働き
糖質が主成分ですが、たんぱく質、カルシウム、鉄分、食物繊維などは精白米よりも多く含んでいます。
ただし、たんぱく質の質のよしあしを決めるアミノ酸スコアは44点と、米の65点にくらべて低いため、たまごや肉、乳製品と組み合わせて食べることがたいせつです。
○漢方的な働き
漢方では神経症、イライラ、更年期の不定愁訴(ふていしゅうそ)などの症状改善に使われます。
常食すれば胃腸が丈夫になり、食欲がでて精力がつき、慢性の下痢(げり)を止める効用も期待できます。
腎臓が弱っている人、腸が弱くて下痢をしやすい人、寝汗をかいて眠れない人などに適した食品といえましょう。
《調理のポイント》
小麦はそのままでは、しょうゆ、味噌の原料に使われますが、ほとんどは小麦粉として利用されます。
小麦は粒のかたさによって、硬質小麦、中間質小麦、軟質小麦の3種類があり、製粉される小麦粉のタイプもちがってきます。
軟質小麦はおもにケーキや菓子、てんぷらの衣などに使われる薄力粉(はくりきこ)、硬質小麦はおもにパンやパスタ、中華麺(めん)などに使われる強力粉(きょうりきこ)、中間質小麦はうどんやひやむぎなどをつくる際に使われる中力粉(ちゅうりきこ)となります。
小麦粉を使った料理では、お好み焼きやすいとんなどがあります。
ところで、小麦粉になるのはおもに胚乳(はいにゅう)部分で、皮と胚芽(はいが)は除かれてしまいます。ビタミンやミネラルなどの栄養をとりたい場合は、粒全体をそのままひいた全粒粉(ぜんりゅうこ)がおすすめです。製粉時に除かれる皮と胚芽は、小麦ふすまとして飼料に使われていますが、最近では栄養補助食品として注目されています。
ちなみにふすまは布袋に入れて入浴剤として利用すると、酵素(こうそ)の働きで肌がツルツルになります。
○注意すべきこと
小麦には体を冷やす作用があるので、冷え症の人は多用するのをひかえましょう。
〈血液循環をよくし、細胞の老化を防止する小麦胚芽の威力〉
小麦の胚芽部分だけを集めて食べやすくしたものが小麦胚芽です。ビタミンB1、B2、食物繊維が豊富なので、糖質の代謝を促進し、疲労回復、便秘解消に役立ちます。
そして、なんといってもビタミンEが多く含まれている点が小麦胚芽の特徴です。血行をよくし、新陳代謝を活発にして細胞の老化を防ぐ働きがあります。これらの働きは、動脈硬化予防や美肌にも有効です。
小麦胚芽は米と混ぜて炊(た)いたり、揚げものの衣に利用するといいでしょう。また、クッキーのタネやホットケーキに加えても香ばしさがプラスされておいしくなります。