日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズムシ(昆虫)」の意味・わかりやすい解説
ミズムシ(昆虫)
みずむし / 水虫
water boatman
昆虫綱半翅(はんし)目異翅亜目ミズムシ科Corixidaeに属する昆虫の総称、またはそのなかの1種。体長1~15ミリメートル、体は卵形から長円形でやや扁平(へんぺい)。頭部、前胸部は幅広く、口吻(こうふん)は短くて1、2節からなる。触角も小さく3、4節。前胸背には横縞(よこじま)や網目状の条斑(じょうはん)をもつものが多い。雄の前脚跗節(ふせつ)はへら状に広がる。中脚は細長く、物につかまるのに適しているのに対して、後脚はオール状の遊泳脚となる。雄の前腿節(たいせつ)にはやすり板があり、それを頭部の側稜(そくりょう)とこすり合わせて水中で発音する。成虫ははねの下に空気を取り込んで呼吸するのでフウセンムシともよばれる。幼虫はおもに皮膚呼吸を行う。おもに池沼、水たまりなどの静水域にすみ、水底付近を活発に泳ぐ。灯火にもよく飛来する。世界各地に分布し、500種以上が知られている。日本産は約20種。
ミズムシHesperocorixa distantiは、体長約10ミリメートル、長楕円(ちょうだえん)形の大形種。体は灰黄褐色で、前胸背は後方へ張り出し、9~12本の黒色ないし黒褐色の横条がある。成虫は頭部と前胸を水面上に出して、はねの下に空気を取り込む。成虫で越冬し、3月ごろに短い柄のある卵を水底付近に産む。北海道から九州にかけての日本全土、朝鮮半島、中国に分布する。池沼などにごく普通な種であったが、最近では水の汚染により非常に少なくなった。
[林 正美]