ホライモリ(英語表記)olm
Proteus anguinus

改訂新版 世界大百科事典 「ホライモリ」の意味・わかりやすい解説

ホライモリ
olm
Proteus anguinus

ホライモリ科のサンショウウオ。1科1属1種。別名オルム。属名はギリシア神話の海神ポセイドンに仕えた予言者プロテウスに由来する。洞穴生物として著名で,全長25~30cmの大型種。ユーゴスラビア北西部,オーストリア南部,イタリア北東部にある石灰岩の暗い洞穴の中を流れる冷たい地下水に生息する。体は細長く頭部扁平で吻(ふん)部が幅広く,尾は側扁する。四肢は退化してきわめて小さく,指は前肢に3本,後肢に2本しかない。眼は退化し,滑らかな皮膚色素を欠く。しかし,孵化(ふか)後明るい場所で飼育すると,黒っぽい色素が現れるが眼は退化する。一生外鰓がいさい)をもち,行動は敏しょうでよく泳ぐ。おもな餌は地下水にすむ甲殻類で,飼育下ではイトミミズボウフラ,小さい魚なども食べる。卵生で,一度に30~40個ほどを産卵し,雌が抱卵して守る。高温で飼育すると卵胎生に近い状態で産まれる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホライモリ」の意味・わかりやすい解説

ホライモリ
ほらいもり / 洞井守
olm
[学] Proteus anguinus

両生綱有尾目ホライモリ科のイモリ。オルムともいう。アドリア海に面した旧ユーゴスラビア西部、オーストリア南部、イタリア北東部の石灰岩地帯に分布する。体は細長い円筒状で尾は扁平(へんぺい)。灰白色の個体が多いが、赤み、黄みがかったものもいる。四肢は小さく、指は前肢に3本、後肢に2本。頭の後方に3対のピンク色のえらをもつ。目は小さく退化し、機能はない。口も小さい。全長20~25センチメートルで、まれに30センチメートルに達する。鍾乳洞(しょうにゅうどう)内の流水や水たまりに生息し、完全に水中性である。深みに潜んでいるが、水面近くにも現れる。生息場所の水温は5~10℃。地下水中の小形甲殻類を食べる。明るい場所で飼育していると、数か月で黒化する。体内受精で、雌は全長約10センチメートルの1、2匹の幼生を産む。室内で13℃以上の水温では約50個の卵を産むが、ほとんど発育しない。幼生の目は成体よりも発達している。

[倉本 満]


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百科事典マイペディア 「ホライモリ」の意味・わかりやすい解説

ホライモリ

オルムとも。両生類ホライモリ科。体長20〜30cm,アドリア海北岸のカルニオラ,ダルマティア地方の石灰洞窟の地下水中に分布。体は細長い円筒状で頭部は扁平で吻部が幅広く,尾は側扁する。全身白色,あるいはばら色を帯び,眼は不透明な皮膚におおわれ,見えない。四肢は小さく前肢に3指,後肢に2指があり,外鰓は3対。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホライモリ」の意味・わかりやすい解説

ホライモリ
Proteus anguinus; olm

サンショウウオ目ホライモリ科。オルムともいう。全長 20~30cm。体には色素がなく,赤みを帯びた白色を呈する。体は細長く,3対の赤い外鰓をもつ。四肢は退化して小さい。幼生の時代には大きな眼があるが,成熟すると退化して消失してしまう。ヨーロッパ南部に分布し,洞窟などの地下水中にすんでいる。

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世界大百科事典(旧版)内のホライモリの言及

【洞窟】より

…したがって,この特異な環境に適応できる動物群はひじょうに限定され,そのすべてが腐食性か肉食性である。代表的なものに,脊椎動物ではホライモリやメクラウオ,昆虫類のメクラチビゴミムシやホラトゲトビムシ,多足類のシロオビヤスデ,甲殻類のムカシエビやメクラヨコエビ,蛛形(ちゆけい)類のメクラツチカニムシやホラヒメグモ,巻貝のミジンツボ,扁形動物のホラアナウズムシなどがある。一般に皮膚が薄く,色素が消失して体色が淡くなり,目が退化してなくなり,昆虫類では羽もなくなっている。…

※「ホライモリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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