ベスト(チョッキ)(読み)べすと(英語表記)vest

翻訳|vest

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベスト(チョッキ)」の意味・わかりやすい解説

ベスト(チョッキ)
べすと
vest

スーツの上着の下に着る、男子用あるいは女子用の袖(そで)なし胴衣チョッキ)のこと。また、16世紀のダブレットから発展した胴着。1670年ごろ現れた新型上衣ジュストコルjustaucorpsの前身であるジャーキンの下にも着用された。形はジュストコルに似ているが、袖が細く裾(すそ)が短い。主として部屋着として用いられたが、外出の際には前のボタンをきちんとかけ、その上に前を大きく開いた上着を着用した。上着と調和するよう贅(ぜい)が凝らされ、前中央打合せ部分や低い位置にあるポケットや裾(すそ)を中心に花模様の刺しゅうを施すなど、はでで華美なものが多かった。袖のあるものが多かったが、袖のないものも出てきた。上着が18世紀なかばにアビ・ア・ラ・フランセーズにかわり、その前端が胴から裾にかけて斜めに裁ち落とされると、それに倣ってベストの丈も短くなり、ルイ16世のころ(18世紀後半)にイギリス型の袖なしのジレにとってかわられる。これらが土台になって、19世紀なかばに現代の三つ揃(ぞろ)いが確立した。その後、女性のスーツが出現し、女性もベストを着用するようになった。

 19世紀なかば以降、イギリスではウエストコートwaistcoatといい、ベストというと男子用の肌着をさす。婦人用のコートやガウンなどのV字形の前飾りや、古代あるいは東洋ルースな外着やローブの類もベストという。日本ではチョッキ、ときにはジレと同義に用いられる場合もある。

[田村芳子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例