袖(そで)のない、ウエスト丈の装飾用胴衣。または背広と対のチョッキのこと。英語ではウエストコートまたはベストという。ルイ16世(在位1774~92)のころ、ヨーロッパ中の男子の公服であったアビ・ア・ラ・フランセーズhabit à la françaiseの下に着用されていた丈の長いベストのかわりに、イギリスから伝わったもの。丈はウエストまで、前身頃(みごろ)には美しい色柄の布地を用いたが、後ろ身頃には安価な別布を用いるのが普通であった。簡易な衣服ながら、服装に変化と彩りを添え、個性的な趣向を凝らすことができるものとして重要視され、貴族から庶民に至るまで普及した。
19世紀なかばに男子の背広が確立してからも、その下に着るチョッキとして残ったが、服装のアクセント的要素は薄れて全体的統一の美が重んじられ、共布が用いられた。19世紀より女性の服装にも取り入れられ、スーツの下にブラウスやシャツがわりに着用される。
[田村芳子]
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