日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
フーゴー(サン・ビクトールのフーゴー)
ふーごー
Hugo ā Saint-Victor
(1096―1141)
中世フランスの神秘主義的スコラ学者。ザクセン出身。1115年ごろパリのサン・ビクトール修道院(アウグスティヌス会)に入り、1133~1141年その修道院長を務める。深い宗教体験に根ざしながら、哲学と諸学を尊重し、信仰と理性の調和的総合を成し遂げた人物である。「すべてを学べ。しかるのちになにものも無益でないことを覚(さと)るであろう」ということばが、彼の態度を示している。おもな著作として『階梯(かいてい)論』Didascalionと『秘蹟(ひせき)論』De sacramentisがある。前者は自由学科と神学の入門書であるが、自由七学科は互いに連係していて、すべてを捨てることなく学ばねばならないとする。後者は一種の神学大全であり、創造と回復(ロゴスの受肉と秘蹟)という視点から世界史を総合的に把握しようとする。そのほかディオニシウス・アレオパギタの天上位階論の注解を書いた。著作はミーニュ『ラテン教父集』(全217巻。1844~1855)の第175~177巻に収録されている。
[熊田陽一郎 2017年12月12日]
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