アウグスティヌス会(読み)あうぐすてぃぬすかい(英語表記)Augustini

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アウグスティヌス会」の意味・わかりやすい解説

アウグスティヌス会
あうぐすてぃぬすかい
Augustini

アウグスティヌス会則戒律)による種々の修道会総称。アウグスティヌスは修道のための共同生活の重要性を説き、共住生活における一致と愛徳を強調する修道会則を定めた。この会則を基礎とする修道会は、ドミニコ会、七つの騎士修道会、聖三位(さんみ)一体会など種々あるが、とくにアウグスティノ修道参事会、アウグスティノ隠修士会、アウグスティノ女子修道会がそのうちの代表的なものである。

(1)アウグスティノ修道参事会Canonici Regulares S. Augustini(ラテン語)11世紀のカロリング王朝の時代に組織された司教座聖堂参事会が発展し、アウグスティヌスの会則(とくに211書簡)を採用することによって、11~12世紀に制度化された。11世紀にすでに北イタリア、南フランスにおいて初代教会の共同生活を範とする聖職者の共同生活が営まれていたが、とくに1059年にはアウグスティヌスの会則に基づく共同生活が公式に承認された。12世紀初頭以来、プレモントレ会は参事会員のための学校をプレモントレの谷に開くなどして、会の改革と隆盛を招来したが、宗教改革以後は衰えた。

(2)アウグスティノ隠修士会Ordo Eremitarum S. Augustini(ラテン語)アウグスティヌスの会則に基づき、1256年教皇アレクサンデル4世の勅書Licet Ecclesiae Catholicaeにより結成された。当初は隠遁(いんとん)的性格をもっていたが、やがて都市に活動を集中して伝道事業や教育活動を行うようになった。同会にはルターも所属していた。14世紀以降、スペイン、イタリア、フランスなどに同系の跣足(せんそく)修道会が生まれた。また隠修士会は、1602年(慶長7)司祭ヘルナンドが来日して豊後(ぶんご)(大分県)に根拠地を置いて、長崎地方に布教を行ったが、1952年(昭和27)にアメリカからふたたび来日し、現在は長崎市に本部を置いて、布教、教育活動に従事している。

(3)アウグスティノ女子修道会 男子修道会に準じて各種の女子修道会が生まれ、中世に栄えた。女子跣足修道会は今日でも活動しており、慈悲の友会(愛徳会)も同系である。

加藤 武]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「アウグスティヌス会」の意味・わかりやすい解説

アウグスティヌス会 (アウグスティヌスかい)
Augustini[ラテン]

ヒッポ司教アウグスティヌスが原則を定めた修道会則(戒律)に従うカトリック修道会の総称。通称アウグスチノ会。聖母マリアの下僕会,聖三位一体会,贖虜の聖母会(メルセス会),アレクシウス会,マリア被昇天会などがあり,ヨハネ騎士修道会やドミニコ会もふくまれる。いずれも個人財産の放棄と共唱祈禱を義務づけ,共同生活における協調精神と愛徳の実践を重んじる。上記のほか,この名称でよばれるものに〈アウグスチノ隠修士会〉と同名女子修道会がある。13世紀にそれまで孤独な生活をしていた隠修士たちが集まり,神に心と精神を捧げる共住生活を誓い,1256年の教皇大勅書《リチェット・エクレジエ》により,観想と宣教活動の両面を追求する托鉢修道会を創設した。14世紀には全ヨーロッパ諸国と聖地に,頭巾つき黒衣・皮帯を身につけた約8000人の会員を数えた。〈宗教改革〉時代のM.ルターはこの会に属していた。女子修道会は1264年に第二会として創設され,後に〈はだし〉と〈靴ばき〉の2系列に分かれた。隠修士会員は1602年(慶長7)日本に渡来し(1952再渡来),長崎を中心に宣教・教育事業に従事している。また修道会ではないが同名の〈修道参事会〉がある。これは11世紀の〈グレゴリウス改革〉の精神をくむ司教座聖堂や教区の聖職者がアウグスティヌス会則に従う共住生活を行う団体であり,〈黒衣の参事会員〉とも呼ばれる。
托鉢修道会
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアウグスティヌス会の言及

【隠者】より

…第1回十字軍の勧請活動で知られる隠者ピエールPierre l’Hermiteのような著名なものもいる。13世紀以降,隠者も共同組織にくわえられることが多く,アウグスティヌス会,カルトゥジア会,カルメル会などが成立し,現在にまで存続する。【樺山 紘一】
[日本]
 日本でも,世俗の生活を捨てたり,そこでの社会的・人間的な関係のもつ制約から逃れ,ときに山野に隠れ住む人を隠者といい,その行為を隠遁という。…

【托鉢修道会】より

…13世紀初めの西ヨーロッパで革新的なキリスト教信仰生活をめざした新形式の修道会の総称。フランシスコ会ドミニコ会カルメル会アウグスティヌス会などがこれに属する。これらの修道会は,中世初期以来のベネディクト会系の修道院が民衆から隔絶した場所に定住し,しかも有力信者からの寄進を受けて富裕化,世俗化したのに対して,その生活方式を根本的に異にし,個人・共同体ともに財産を所有せず信徒からの喜捨にたよる〈清貧〉の精神を重視した。…

※「アウグスティヌス会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android