フロン排出抑制法(読み)ふろんはいしゅつよくせいほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フロン排出抑制法」の意味・わかりやすい解説

フロン排出抑制法
ふろんはいしゅつよくせいほう

オゾン層の保護のためのウィーン条約モントリオール議定書を受けて、オゾン層の保護と地球温暖化の防止に向けて、フロン類の大気中への放出抑制するためにフロン類の使用の合理化およびその管理の適正化を目的としている法律。正式名称は「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」(平成13年法律第64号)である。制定時の名称は「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」(フロン回収・破壊法)であったが、2013年(平成25)に改称された。

 クロロフルオロカーボンCFC)、ハイドロクロロフルオロカーボンHCFC)、ハイドロフルオロカーボンHFC)の3種類のフロン類の大気中への放出を禁止している。次に、これらのフロン類が充填(じゅうてん)されている業務用冷凍空調機器(冷蔵冷凍機器、エアコンディショナー)を第一種特定製品であると定義し、第一種特定製品を廃棄する際に、これらのフロン類を回収・破壊するよう義務づけている。また、自動車リサイクル法(「使用済自動車の再資源化等に関する法律」平成14年法律第87号)に定められている特定エアコンディショナーを第二種特定製品であると定義し、その整備や取引にあたっては自動車リサイクル法の下での回収基準手続に従うよう定めている。2006年には、回収時期を増やし、建築解体の際の確認を義務づけ、また、フロン類の引渡し文書の管理制度を創設する改正が行われた。それでも、回収率は30%前後に低迷し、さらに、代替フロン類としてのHFCの排出量が2005年以降急増した。そのため、回収・破壊に加えて製造から廃棄までの全段階にわたる包括的な対策がとれるよう2013年に改正され(2015年施行)、あわせて現名称に改められた。

 他方で、地球温暖化対策計画(2016年5月)は、業務用冷凍空調機器の廃棄時のフロン類の回収率目標を2020年度は50%、2030年度は70%と定めた。それを受けて、フロン排出抑制法の2019年(令和1)の改正により、第一種特定製品の廃棄時にフロン類回収済み証明書の交付、建物解体時に当該機器の有無の確認記録の保存、当該機器の引取りの際に、フロン類回収済み証明書の確認と、確認できない機器の引取りの禁止、罰則の強化などが定められた。

 なお、フロン類の回収・破壊については、上述の自動車リサイクル法のほか、エアコン、冷蔵庫および冷凍庫を含む家電品のリサイクルを定めている家電リサイクル法(「特定家庭用機器再商品化法」平成10年法律第97号)にも定められている。

[磯崎博司 2021年9月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例