オゾン層保護法(読み)おぞんそうほごほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オゾン層保護法」の意味・わかりやすい解説

オゾン層保護法
おぞんそうほごほう

オゾン層の保護に関するウィーン条約(1985年採択)およびその下のモントリオール議定書(1987年採択)に対応するための国内法。正式名称は「特定物質規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(昭和63年法律第53号)である。なお、オゾン層保護法は、モントリオール議定書に定められている義務に対応することにとどまらず、オゾン層保護のための対策を積極的に推進することも目ざしており、後述のように、特定物質の使用者に対して排出抑制努力を義務づけている。

 オゾン層保護法は、モントリオール議定書の付属書A、B、CおよびEに掲載されているオゾン層の破壊にかかわる特定物質ごとに定められた段階的削減期限に基づいて、特定物質の生産量および消費量に基準限度を定めている。対象とされている特定物質は、クロロフルオロカーボンCFC)、ハロン四塩化炭素、1,1,1‐トリクロロエタン(メチルクロロホルム)、ハイドロクロロフルオロカーボンHCFC)、ハイドロブロモフルオロカーボン(HBFC)、ブロモクロロメタンおよび臭化メチル(ブロモメタン)である。2016年(平成28)時点では、付属書CのグループIに属するHCFC(全廃期限は先進国2030年、開発途上国2040年)以外は、生産および消費ともに全廃されている。HCFCについては、「今後のオゾン層保護対策のあり方について(中間報告)」(化学品審議会オゾン層保護対策部会、1996年(平成8)3月14日)において用途ごとに定められた目標に基づいて削減が行われている。

 上記の基準限度の遵守を確保するため、具体的には、特定物質の製造者には経済産業大臣の許可を、その輸入者には「外国為替及び外国貿易法」の下の輸入承認を、また、その輸出者には、経済産業大臣への輸出数量などの年次届出を、それぞれ義務づけている。他方、特定物質の使用者には、定められた指針に基づいて特定物質の排出抑制と合理的使用に努めることが求められている。

 オゾン層保護法の2018年改正は、モントリオール議定書のキガリ改正(採択2016年10月、発効2019年1月。改正名は第28回締約国会合の開催地であるルワンダのキガリにちなむ)に即して、上記の特定フロン類と同一の規制措置ハイドロフルオロカーボン(HFC)に対して適用した。なお、CFC、HCFC、HFCの3種類のフロンについては、フロン排出抑制法がそれらの回収・破壊を義務づけている。

[磯崎博司 2021年9月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オゾン層保護法」の意味・わかりやすい解説

オゾン層保護法
オゾンそうほごほう

昭和63年法律53号。オゾン層の保護をはかるため,フロンなどの製造の規制と排出の抑制,および使用の合理化に関する措置を講ずることを目的とした法律。正称「特定物質等の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」。1970年代,世界中で工業用としてフロンなどの物質が大量に使用され,地球を取り巻くオゾン層の破壊が進んでいることが問題となった。オゾン層保護のための国際的な枠組みとして,1985年オゾン層の保護のためのウィーン条約,1987年オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書が採択され,その的確かつ円滑な実施のため,制定された。(→特定フロン代替フロン

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