日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
フランク(Robert Frank)
ふらんく
Robert Frank
(1924―2019)
アメリカの写真家。スイスのチューリヒ生まれ。ファッション写真家を志し1947年に渡米、著名なアート・ディレクターのアレクセイ・ブロードビッチAlexey Brodovitch(1898―1971)の後見を受けて女性向けファッション誌『ハーパーズ・バザー』Haper's BAZAARなどの仕事を始める。しかし希望を託した新天地アメリカの現実は厳しく、さまざまな人間模様を直視するうちにファッション写真に限界を感じ、ドキュメンタリー写真の手法で人間の運命や人生の意味を問う写真家へと転身する。1955年と1956年にグッゲンハイム奨学金を受けて、全米を取材旅行し刊行した写真集『アメリカ人』The Americans(1958年パリ、1959年ニューヨークで刊行)は、従来は公正さや客観性が重視されたドキュメンタリー写真の世界に、私的な洞察力の表明という新たな次元を開き、現代芸術たる写真表現の可能性を確立した。1959年以降は個人映画も製作し、1960年代より現代芸術の諸分野に幅広い影響を及ぼす。寡作なため1980年代にはその活動がみえにくかったが、1990年代には再評価の機運が世界的に高まり、1998年ワシントンのナショナル・ギャラリーを皮切りに大規模な回顧展が世界各地で開催された。
[平木 収]
『The Americans(1959, Grove Press, New York)』