トゲタナバタウオ(読み)とげたなばたうお(英語表記)barred spiny basslet

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゲタナバタウオ」の意味・わかりやすい解説

トゲタナバタウオ
とげたなばたうお / 棘七夕魚
barred spiny basslet
[学] Belonepterygion fasciolatum

硬骨魚綱スズキ目タナバタウオ科トゲタナバタウオ亜科に属する海水魚。日本では伊豆大島、八丈島、高知県柏島(かしわじま)、愛媛県室手(もろで)、屋久島(やくしま)、南西諸島などの海域から知られ、世界では台湾南部、オーストラリア、ニュー・カレドニアなど西太平洋と東インド洋に広く分布する。背びれと臀(しり)びれの棘(きょく)は多くて、それぞれ18本と10本で、背びれの棘部と軟条部の間に欠刻(切れ込み)がなく、側線は3本であるのが顕著な特徴である。体は細長くて、側扁(そくへん)する。吻長(ふんちょう)は眼径よりも短い。下顎(かがく)は上顎よりも前方に突出する。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁には棘がない。側線は3本で、背方の側線は鰓孔(さいこう)上端付近から始まり、背びれの基底の近くを通って尾柄(びへい)近くまで走り、中央のものは胸びれの後方から尾びれの基底まで伸び、そして腹方のものは胸びれの基底下方から始まり、臀びれの基底近くを通って尾びれの基底まで達する。それぞれの側線有孔鱗(ゆうこうりん)数は35~36枚、22~23枚、そして30~31枚。背びれは鰓孔の後縁上方から始まり、体の後端近くまで伸び、18棘5軟条。臀びれは背びれ棘部の中央下方から始まり尾びれ基底まで達し、10棘5軟条。腹びれは伸長し、後端は肛門(こうもん)に達する。体は赤色または暗褐色の2タイプがある。体側に12~13本の横帯がある。吻端から目を通って前鰓蓋骨の上部まで伸びる黒い縦帯があり、その下方にある白い帯が頬(ほお)や喉(のど)の桃色から赤色部を明瞭(めいりょう)に分ける。鰓蓋の上部に眼径大の眼状斑(はん)がある。背びれと臀びれは赤色または褐色で、縁辺は淡色。背びれと臀びれの後端付近および尾びれ後端は黒い。サンゴ礁の石やサンゴの下、潮だまり(タイドプール)に生息する。全長は5センチメートルほどにしかならない小形種である。

 日本にいるトゲタナバタウオ亜科のもう1種のフチドリタナバタウオAcanthoplesiops psilogasterは体が一様に黒褐色で、垂直鰭(すいちょくき)(背びれ、臀びれ、尾びれの総称で、対をなさないひれ)と腹びれの縁辺が黄色であること、側線が1本で、胸びれの後端上方まで伸びることなどで本種と区別できる。フチドリタナバタウオは日本では小笠原(おがさわら)諸島、和歌山県白浜、愛媛県室手の沿岸から知られている。

[尼岡邦夫 2022年12月12日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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