チチタケ(読み)ちちたけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チチタケ」の意味・わかりやすい解説

チチタケ
ちちたけ / 乳茸
[学] Lactarius volemus Fr.

担子菌類、マツタケ目ベニタケ科の食用キノコ。傘は径5~10センチメートル、初めは丸山形であるが、やがて開いて浅い漏斗(ろうと)状となる。表面は黄茶色で粘りはない。ひだは淡黄色を帯びた白。茎は円柱状で黄茶色。全体に硬いが、もろく折れやすい。傷つけると白い乳液を多量に分泌するが、味は辛くない。夏、広葉樹林に多く生える。日本全土をはじめ、世界各地に分布する。

[今関六也]

チチタケ属

ベニタケ科Russulaceaeは乳液を分泌するチチタケ属Lactariusと分泌しないベニタケ属Russulaに分類される。チチタケ属の代表種がチチタケで、ほかにも多くの種があるが日本での研究は遅れており、和名のないものが多い。チチタケ属は、いずれも樹木の根に菌根をつくって木と共生する。また、乳液の味と色などの特徴は、種を見分ける重要な手掛りとなる。以下にそのおもなものを示す。

 (1)乳は白、辛くない。チチタケ、ヒロハチチタケなど。(2)乳は白、しだいに辛くなる。アカチチモドキ、ヒメチチタケなど。(3)乳は白、きわめて辛い。ツチカブリ、ケシロハツ、カラハツタケなど。(4)乳は白から黄色に変わり、辛い。キカラハツ、キチチタケなど。(5)乳は白から淡紅色に変わり、辛い。ハイイロカラチチタケ。(6)乳は白から淡紅色に変わり、辛くない。クロチチタケ。(7)乳は白から紫に変わり、辛い。トビチャチチタケ、ウズハツ。(8)乳は白から灰緑色に変わり、辛くない。キハツタケ。(9)乳は橙(だいだい)色ないし紅色から青緑色に変わり、多少辛い。ハツタケ、アカハツなど。

[今関六也]


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改訂新版 世界大百科事典 「チチタケ」の意味・わかりやすい解説

チチタケ
Lactarius volemus Fr.

担子菌類ハラタケ目ベニタケ科の食用キノコ。高さ6~12cm,かさは直径5~12cmほど,はじめ中央がややくぼんだまんじゅう形,のち開いて浅い漏斗形になる。表面はほとんど滑らかで黄茶色,肉は硬いがもろく折れやすい。ひだは白~淡黄色で淡茶色のしみをおび,茎にやや垂生し,茎は直径1~2.5cm,かさと同じ色で,もろく折れやすく,縦に裂けない。キノコに傷をつけると白い乳を多量に分泌する。乳はやや渋みがあるが辛くはない。夏~秋,雑木林の地上に生え,ふつう広く食用にされる。北半球温帯以北に広く分布し,また日本全土にみられる。チチタケ属Lactariusが分泌する乳は味が辛い,苦い,味がないなどの特徴があり,色ははじめ白いが空気にふれると黄・紅・青緑色・紫などに変色するものなどがあり,はじめから朱または紅色のもの,それがさらに青緑色・藍色に変色するなどさまざまである。キノコを採ったときにはこれらの点を確かめる必要がある。日本人が古くから親しむハツタケL.hatsutake Tanakaもチチタケ属のキノコで,乳は紅色だが空気にふれると青緑色に変色する。一見毒々しいが,むしろこれがハツタケの特徴である。チチタケ属の菌はいずれも生きた木の根に菌根をつくって共生する。木とキノコとの間に密接なかかわりがあり,森林によってキノコの種類にもちがいがある。
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栄養・生化学辞典 「チチタケ」の解説

チチタケ

 [Lactarius volemus].チダケともいうベニタケ目ベニタケ科チチタケ属の食用キノコ.傘の径3〜12cmになる.

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百科事典マイペディア 「チチタケ」の意味・わかりやすい解説

チチタケ

ハツタケ

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