日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
スミス(William Eugene Smith)
すみす
William Eugene Smith
(1918―1978)
アメリカの報道写真家。ヒューマニズムに立脚した人間味あふれる数多くのドキュメント、ルポルタージュを残した。カンザス州に生まれ、大学卒業と同時にフリー写真家として通信社と契約し『ライフ』をはじめとする雑誌の仕事に従事、1938年『ライフ』誌の専属となる。第二次世界大戦中は従軍し、戦後は写真通信社「マグナム・フォトス」のメンバーとして活躍し、フォト・エッセイという形式で立体的かつ叙事的な写真表現を確立し、フォト・ジャーナリズムに新風を吹き込んだ。代表作に『スペインの村』(1951)、『ピッツバーグ』(1955~58)などがある。晩年、日本の水俣(みなまた)病問題に強い関心を寄せ、71年来日して現地に居を移し、公害被害者のドキュメントに全身で打ち込み、現代社会における産業と人間の軋轢(あつれき)を鋭く告発、写真集『水俣』(1973)を出版。水俣病公害訴訟を取材中に被告側警備員に暴行を受け失明し、本国で没した。
[平木 収]
『『写真集 水俣』普及版(1982・三一書房)』