マグナム・フォトス(読み)まぐなむふぉとす(英語表記)Magnum Photos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マグナム・フォトス」の意味・わかりやすい解説

マグナム・フォトス
まぐなむふぉとす
Magnum Photos

国際的な写真通信社。1947年、ロバート・キャパ、アンリ・カルチエ・ブレッソン、デビッド・シーモアDavid Seymour(1911―1956)、ジョージ・ロジャーGeorge Rodger(1908―1995)の4人によってパリで設立された。当初より、写真家自らの意志主義主張に沿った取材と配信を目的とし、組織の維持は構成メンバーの相互扶助により行ってきた。その後、組織は拡大し、世界から報道写真の俊秀を集め、『ライフ』誌をはじめとするジャーナリズムに写真を提供してきた。共同企画製作の写真展「地上に平和を」(1965)などもあるが、活動の中心はメンバーの自主的な作品を出版界に提供することで、1950年代、1960年代の代表的なフォトエッセイマグナムのメンバーによるものが多く、写真ジャーナリズムや報道写真界に及ぼした影響は大きい。1972年の『ライフ』休刊(1978年復刊、2000年廃刊)に象徴される1970年代以降の写真ジャーナリズムの衰退や、キャパやシーモアらの創立会員の死去に伴って、組織の性格は多少変化したものの、現在も写真通信社としてもっとも有力な存在であることに間違いはない。日本からも濱谷浩(はまやひろし)、久保田博二(ひろじ)(1939― )が参加した。イブ・アーノルドEve Arnold(1913―2012)、エリオット・アーウィットElliott Erwitt(1928―2023)、レイモン・デュパルドンRaymond Depardon(1942― )、コーネル・キャパCornell Capa(1918―2008)ら約60名の有力メンバーを擁し、ほかに寄稿写真家を世界的に網羅している。2021年現在、パリとニューヨークロンドンに事務所を設置している(東京事務所は2019年に閉鎖)。

[重森弘淹・平木 収]

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百科事典マイペディア 「マグナム・フォトス」の意味・わかりやすい解説

マグナム・フォトス

写真通信社の名称最初はグループ名であったが,1947年写真通信社として発足した。創立者は,カルティエ・ブレッソンキャパ,D.シーモア,G.ロジャー,次いでビショフやエルンスト・ハース〔1921-1986〕らが参加し,《ライフ》誌などを舞台に活躍した。写真家による通信社としては世界唯一のもので,自由かつ自主的に仕事することを目的としている。その後ブルース・デビッドソン〔1933-〕,クーデルカらによってパーソナルな視点の作品が手がけられている。
→関連項目スミス浜谷浩

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世界大百科事典(旧版)内のマグナム・フォトスの言及

【カルティエ・ブレッソン】より

…しかし,スナップ・ショットにもとづく彼の写真は一部の熱心な支持を受けただけであった。36年パリの新聞社の入社試験を受け不合格になるが,この時キャパ,シーモアDavid Seymourと出会い,国際的写真通信社〈マグナム・フォトスMagnum Photos〉設立(1947)のきっかけとなる。この前後,スペイン(1932‐33),メキシコ(1934),インド,中国(1948‐50)などを撮影する一方,ヨーロッパ各地でも数多くの写真を撮った。…

【キャパ】より

…36年パリの新聞社の入社試験を受けるが落第し,近くのカフェで酒を飲んでいるときに,同様に落第したカルティエ・ブレッソン,D.シーモアと出会い,個性的で自由な写真活動ができる写真通信社をつくることを約束しあう。それがのちの〈マグナム・フォトスMagnum Photos〉(1947創設)である。キャパは〈戦争写真家〉といわれるが,文字どおり常に戦乱の第一線で写真を撮りつづけた。…

【ジャーナリズム】より

…日々に生起する社会的な事件や問題についてその様相と本質を速くまた深く公衆に伝える作業。また,その作業をおこなう表現媒体をさしていう。歴史的には新聞や雑誌による報道・論評をつうじて果たされることが多かったので,転じて新聞・雑誌など定期刊行物を全体としてさす語として用いられることもある。ラテン語の,日々の刊行物をさす〈ディウルナdiurna〉に由来する。
[ジャーナリズムの成立と発展]
 表現思想活動としてのジャーナリズムは,印刷物,定期刊行物をつうじて政治・文化批判が展開されるなかで,その意義をあきらかにしてきた。…

【マグナム】より

…この3人の理想が,第2次大戦後の47年,イギリス人の写真家ロジャーGeorge Rodgerを加えパリで実現した。写真通信社〈マグナム・フォトス〉は,なによりも写真家の自由な取材と発表を擁護する協同組合的な組織であった。その後スイス人のビショッフWerner Bishof(1916‐54),オーストリア人のハースErnst Haas(1921‐86)など個性的な写真家がつぎつぎと参加し,《ライフ》《パリ・マッチ》など世界的な雑誌を舞台に大活躍した。…

※「マグナム・フォトス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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