スティショバイト(読み)すてぃしょばいと(英語表記)stishovite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スティショバイト」の意味・わかりやすい解説

スティショバイト
すてぃしょばいと
stishovite

珪酸鉱物(けいさんこうぶつ)の多形(同じ化学組成で原子配列が異なる一群)の一つで、きわめて高圧下で生成される。温度1200~1400℃、1.6ギガパスカル(約1万6000気圧)以上の圧力で合成される。そのため密度は他の珪酸鉱物に比較して著しく大きい。最初アリゾナの隕石(いんせき)孔にある砂岩中からコース石などとともに産した。非常に微細なものであるが、外観は正方柱状に近い。この鉱物のケイ素酸素のつくる八面体の中心に位置する。すなわち6配位をとることであり、普通のケイ素が4配位(四面体の中心に位置する)をとるのと根本的に異なる。最初にこの鉱物に相当する物質を合成したロシアの結晶学者スティショフSergei Mikhailovich Stishov(1937― )にちなんで命名された。

松原 聰]

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改訂新版 世界大百科事典 「スティショバイト」の意味・わかりやすい解説

スティショバイト
stishovite

鉱物の一種。化学組成SiO2正方晶系無色透明,ガラス光沢。非常に細粒のため微小硬度を測定する。比重4.35。コーサイトよりフッ酸に難溶。1961年にソ連のスティショフS.M.StishovとポポワS.V.Popovaによって温度1200~1400℃,圧力160kbarで合成されたが,天然には翌62年にアメリカ,アリゾナ州バリンジャー隕石孔の砂岩中にコーサイトに伴って産出するのが発見された。石英の多形で,コーサイトよりさらに高圧で生成する。スティショバイトとコーサイトは非常に大きな隕石の衝突に伴う一時的な高温・高圧によって生成したものである。その後,他の隕石孔でも,この鉱物産出が報告されている。日本には産出しない。
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百科事典マイペディア 「スティショバイト」の意味・わかりやすい解説

スティショバイト

1200〜1400℃,16万気圧以上の高圧下でできるケイ酸鉱物。比重が,同じ組成SiO2の石英の比重2.65に比べ4.28〜4.35と非常に大きい。天然には米国アリゾナ州の隕石(いんせき)孔付近の砂岩中にコーサイト共存,隕石落下時の衝撃で生成したと考えられる。

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世界大百科事典(旧版)内のスティショバイトの言及

【シリカ鉱物】より

…化学組成SiO2で示される無水ケイ酸鉱物の総称で,天然には5種の鉱物として産出する。すなわち,石英,トリディマイトtridymite,クリストバライトコーサイトスティショバイトである。これらの中で,石英が最も普通な鉱物で,トリディマイトとクリストバライトは酸性火山岩中に産する。…

※「スティショバイト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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