スタティウス(英語表記)Publius Papinius Statius

改訂新版 世界大百科事典 「スタティウス」の意味・わかりやすい解説

スタティウス
Publius Papinius Statius
生没年:40か45ころ-96ころ

帝政期ローマ詩人ナポリ出身。詩人,学校教師の父より教育を受け,若年にして詩才を発揮,ローマに出てドミティアヌス帝の愛顧を受け,当時第一流の詩人としての地位を築いた。94年ころカピトリウムの詩の競技に敗れ,故郷に隠退した。博学にして情愛の深い人であった。作品中,オイディプス王の2子の王位争いに取材した叙事詩《テーバイス(テーバイ物語)》12巻,英雄アキレウスの生涯を扱った未完の叙事詩《アキレイス》2巻,祝婚歌,送別歌など題を得て作詩した即興詩集《シルウァエ》5巻が伝わる。《テーバイス》は劇的な叙述に優れるが構成に弱点がある。過度の修辞,膨大な語彙など当時の文学の特徴を示す。彼の本領はむしろ即興詩において発揮され,とくに〈眠りへの祈り〉(《シルウァエ》第5巻)は彼の詩才を示す最も美しい詩の一つである。彼の叙事詩は中世大いに人気を博し,ダンテ,チョーサーらの愛読書であった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スタティウス」の意味・わかりやすい解説

スタティウス
すたてぃうす
Publius Papinius Statius
(45ころ―96)

古代ローマの詩人。ナポリで生まれる。父親に詩の手ほどきを受け、ローマで詩人としての名声を確立したが、晩年は故郷に隠退し、そこで亡くなった。現存作品としては、叙事詩『テーバイ物語』全12巻、叙事詩『アキレウス物語』(未完)、おりおりに書かれた32編の詩を集めた『シルウァエ』全五巻がある。中世の詩人ダンテやチョーサーに多大の影響を及ぼした。

[木村健治]

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世界大百科事典(旧版)内のスタティウスの言及

【ラテン文学】より

…またそのほかの散文作家には,小説《サテュリコン》の作者ペトロニウス,百科全書《博物誌》の著者の大プリニウス,《書簡集》を残した雄弁家の小プリニウス,農学書を残したコルメラ,2世紀に入って,《皇帝伝》と《名士伝》を著した伝記作家スエトニウス,哲学者で小説《黄金のろば(転身物語)》の作者アプレイウス,《アッティカ夜話》の著者ゲリウスなどがいる。 詩の分野ではセネカの悲劇のほかに,叙事詩ではルカヌスの《内乱(ファルサリア)》,シリウス・イタリクスの《プニカ》,ウァレリウス・フラックスの《アルゴナウティカ》,スタティウスの《テバイス》と《アキレイス》など,叙事詩以外ではマニリウスの教訓詩《天文譜》,ファエドルスの《寓話》,カルプルニウスCalpurniusの《牧歌》,マルティアリスの《エピグランマ》,それにペルシウスとユウェナリスそれぞれの《風刺詩》などがみられる。2世紀初頭に創作したユウェナリスのほかはすべて1世紀の詩人たちである。…

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