シュテルン(英語表記)Otto Stern

デジタル大辞泉 「シュテルン」の意味・読み・例文・類語

シュテルン(Otto Stern)

[1888~1969]米国物理学者ドイツ生まれ。ナチスに反対して1933年渡米、39年に帰化した。量子力学の基礎的実験分野で貢献。43年、ノーベル物理学賞受賞。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「シュテルン」の意味・読み・例文・類語

シュテルン

(Otto Stern オットー━) アメリカの物理学者。ドイツのゾーラウ(現在のポーランドのゾリ)生まれ。ハンブルク大学教授・カーネギー研究所教授。磁場内での電子の角運動に関する「シュテルン‐ゲルラハの実験」で知られる。一九四三年ノーベル物理学賞受賞。(一八八八‐一九六九

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「シュテルン」の意味・わかりやすい解説

シュテルン
Otto Stern
生没年:1888-1969

ドイツの上シレジアのソラウ(現,ポーランドのゾリ)生れの物理学者。ドイツの諸大学で学び,1912年ブレスラウ大学で物理化学での学位を得た。この間A.ゾンマーフェルト,O.ルンマー,E.プリングスハイムらの指導を受け,またL.ボルツマン,R.J.E.クラウジウス,W.H.ネルンストらの著作に傾倒した。後年みずから〈実験的理論物理学者〉と称しているが,その素地はこの間に形成されたのであろう。理論家としての活動の時期(1912-19)には,ブレスラウおよびチューリヒでA.アインシュタインとも親交があり,絶対0度における物理系のふるまいについての共同研究もある。この研究との関連で論ぜられた単原子気体の絶対エントロピーの問題は重要で,ネルンストの法則の定式化に貢献している。また,この問題に量子論を適用することは当時困難とされていたが,彼は高温での固体結晶とその蒸気の平衡系を扱うことにより,満足のいく理論的帰結を示した。その後M.ボルンのもとで固体の表面エネルギーの理論的研究に着手したが,これが機縁となって分子線の方法の研究という実験分野へ移行することとなった。最初の応用は気体分子の速度分布(マクスウェル分布)の実験的証明であったが,次いで磁場と原子の磁気モーメントの相互作用を検出することを考え,W.ゲルラハと共同して,量子論における方向量子化を検証した(シュテルン=ゲルラハの実験)。また陽子重陽子を含む各種粒子の磁気モーメントの測定も彼によって行われた。分子線研究のいま一つの重要な業績は,物質の波動性の実証である。分子線の干渉を用いたこの実験はド・ブロイ以後なお仮説的であった物質の波動性を決定的にしたものといえる。これらの業績により,43年ノーベル物理学賞を受賞。

 アカデミックな経歴はチューリヒ大学の私講師に始まり,フランクフルト大学,ロストク大学を経て1923年ハンブルク大学の物理化学教授,同研究所長となるが,33年ナチズムの台頭とともに渡米し,45年までピッツバーグのカーネギー研究所物理学教授を務めた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「シュテルン」の意味・わかりやすい解説

シュテルン

ドイツ生れの米国の物理学者。ブレスラウ大学を出て1923年ハンブルク大学教授,1933年ナチスに追われて渡米,カーネギー工科大学教授となり,1939年米国に帰化。ゲルラッハWalter Gerlachと協力,銀の原子線に不均一な磁場を作用させて方向量子化を実証,原子の磁気モーメントを算出(シュテルン=ゲルラッハの実験,1922年)。この装置を改良して陽子の磁気モーメントを測定(1933年)。また原子線の回折を発見してドブロイの物質波の理論を確証(1931年)した。1943年ノーベル物理学賞。
→関連項目ラビ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シュテルン」の意味・わかりやすい解説

シュテルン
Stern, Otto

[生]1888.2.17. ゾラウ
[没]1969.8.17. カリフォルニア,バークリー
ドイツ系のアメリカの物理学者。ブレスラウ大学に学び,のち2年間 A.アインシュタインのもとで働く。フランクフルト大学講師 (1914) ,ハンブルク大学物理化学教授 (23) 。 1933年ナチス政権に追われてアメリカに渡り,カーネギー工科大学教授。 45年に退官。アメリカ科学アカデミー会員。初め統計熱力学を研究していたが,1919年以後実験的研究に移り分子線を扱った。 W.ゲルラハとの共同で,磁場を通過する分子 (原子) 線が原子の方向量子化により特定方向に分離すること (シュテルン=ゲルラハの実験 ) を確認 (22) ,さらに陽子の磁気モーメントを決定した (33) 。 43年ノーベル物理学賞受賞。

シュテルン
Stern, William Louis

[生]1871.4.29. ベルリン
[没]1938.3.27. ノースカロライナ,ダラム
ドイツの心理学者。ブレスラウ (現ウロツワフ) ,ハンブルク大学教授を歴任,ナチスの圧迫を逃れて渡米。デューク大学教授。知覚研究から出発し,個性,発達,差異心理学,さらに教育心理学と,その領域は広範。特に後期には,人を統一的,目的追求的存在としてとらえ,人格主義的心理学を主張。主著『人と事物』 Person und Sache (3巻,1906~24) ,『人格の基盤についての一般心理学』 Allgemeine Psychologie auf personalistischer Grundlage (35) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

367日誕生日大事典 「シュテルン」の解説

シュテルン

生年月日:1871年4月29日
ドイツの心理学者
1938年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のシュテルンの言及

【シュテルン=ゲルラハの実験】より

…磁場の中を運動する荷電粒子について,その角運動量ベクトルは磁場方向の成分が特定のとびとびの値のどれかになるような方向しかとらないこと(方向量子化)を証明した最初の実験。1921年,ドイツのO.シュテルンとゲルラハWalter Gerlach(1889‐1979)は加熱した炉から噴出する銀原子をスリットで絞って細いビームとし,下から上に向かい急激に強さを増す磁場を通したところ,ビームは上下の2方向に截然と分裂した。それはビームをガラス板で受けたとき上下に分かれた2ヵ所に銀原子が付着し,中間にはつかなかったことから知られた(図1)。…

※「シュテルン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android