コシアブラ(英語表記)Acanthopanax sciadophylloides Fr.et Sav.

改訂新版 世界大百科事典 「コシアブラ」の意味・わかりやすい解説

コシアブラ
Acanthopanax sciadophylloides Fr.et Sav.

山地に生えるウコギ科の落葉高木。昔この木から樹脂をとって金漆(ごんぜつ)というウルシに似た塗料に用いたところから,ゴンゼツノキの名がある。幹は高さ10m以上になり,樹皮褐色を帯びた灰白色で楕円形の皮目がある。葉は互生し,5小葉をもった掌状複葉で,7~30cmの葉柄がある。小葉は倒卵状楕円形で鋸歯があり,裏面はわずかに淡緑で粉白色を帯びる。中央の小葉は最も大きく,側小葉は小型である。8月頃,枝先に散形花序を総状につけた枝を束生した複雑な花序を出し,淡黄緑色の花をつける。花弁は5枚,長さ1.5mmでそりかえり,おしべは5本。子房は下位で2室。果実球形で径4~5mm,黒紫色に熟す。日本特産で北海道から九州までの山地に自生する。若芽香気があって食べられる。材は黄白色で軽く光沢が美しいが割れやすい。ろくろ細工,箱材,棒,扇子の骨その他に用いられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コシアブラ」の意味・わかりやすい解説

コシアブラ
こしあぶら / 漉油
[学] Chengiopanax sciadophylloides (Fr. et Sav.) C.B.Shang et J.Y.Huang
Acanthopanax sciadophylloides Fr. et Sav.

ウコギ科(APG分類:ウコギ科)の落葉高木。高さ15メートル、樹皮は灰褐色。葉は5小葉からなる掌状複葉で、質は薄く、小葉は卵状長楕円(ちょうだえん)形、長さ10~20センチメートルで、7~30センチメートルの長い柄がある。花は8月、その年に伸びた枝の先に長い柄のある複散形花序に多数つき、淡黄緑色である。果実は液果で、9~10月に黒く熟す。北海道から九州にかけての山地に広く分布し、秋の黄葉は美しい。樹皮から樹脂液をとり、漉(こ)して塗料(金漆(ごんぜつ)という)をつくったのでこの名がある。金漆の音読みをもとにゴンゼツノキともいう。

 材は箱、箸(はし)、杓子(しゃくし)、扇子の骨などの器具材のほか、マッチの軸としても利用する。若芽は食用となる。

[門田裕一 2021年11月17日]

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百科事典マイペディア 「コシアブラ」の意味・わかりやすい解説

コシアブラ

北海道〜九州の山地に生えるウコギ科の落葉高木。葉は互生し,5小葉からなる掌状複葉。夏,枝先に淡黄色の小花が球状にまとまった散形花序を多数つける。果実は球形で黒紫色に熟す。材は白く,木目が細かく光沢があるので,細工物,箸(はし),楊枝(ようじ)などにされる。山形県米沢市笹野の一刀彫はこの材が用いられる。昔,樹脂から金漆(ごんぜつ)という漆に似た塗料をつくったことからゴンゼツノキともいう。

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世界大百科事典(旧版)内のコシアブラの言及

【シラキ(白木)】より

…和名のもととなった白い材は,細工物や薪炭材とする。材が白いのでシラキと呼ばれる樹木には,ドロノキ,アカメガシワコシアブラミズキなどがある。【森田 竜義】。…

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