グラス=スティーガル法
グラス=スティーガルほう
Glass-Steagall Act
アメリカ合衆国の銀行と証券業の業務分離,銀行の信用供与に関する規制,預金者の保護などを定めた包括的な金融制度改革法。正式名称は 1933年銀行法。1929年のニューヨーク株式市場の大暴落をきっかけとする大恐慌(→大不況)対策の一環として制定された。この法により銀行業務と証券業務は原則的に分離されることとなったが(16,20,21,32条),1980年代以降この規制の撤廃を求める議論が高まり,1999年に成立したグラム=リーチ=ブライリー法 Gramm-Leach-Bliley Actにより銀行・証券の分離規定は撤廃され,銀行は金融持株会社のもとに設立した証券子会社を通じて証券業務に進出できることになった。その背景には,(1) 1970年代に始まるアメリカ金融革命のなかで証券業界に比べて銀行業が劣勢になってきたこと,(2) 1980年代に入ってアメリカの銀行の世界的地位が低下し,国際競争力の回復が要請されたこと,(3) アメリカ金融市場の開放要求が強まってきたこと,(4) グラス=スティーガル法の規定が曖昧な部分に関する商業銀行の活動が活発化してきたことなどによる。しかし,2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻を契機として生じた金融危機の再発防止をねらって 2010年に成立した金融規制改革法のドッド=フランク法 Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Actでは,自己勘定取引やヘッジファンドへの投資の禁止など,ボルカー・ルールと称される銀行への資産運用規制が導入された。(→銀行・証券の分離,連邦預金保険公社)
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報