ガス自由化(読み)がすじゆうか

知恵蔵 「ガス自由化」の解説

ガス自由化

ガス市場を一般事業者に開放し、ガスの需給体制を自由化する動き。資源エネルギー庁が推進する「エネルギーシステム改革」の一環で、2017年4月からは、都市ガスの小売全面自由化が始まる。LP(プロパン)ガスと都市ガスに大別されるガス事業のうち、LPガスは約2万1千の事業者が関与しているが、都市ガスはこれまで大手数社が地域独占してきた。1995年に大規模工場などの大口契約(年間200万立方メートル以上)を対象とした新規参入を認めて以来、段階的に自由化の範囲を拡大してきたが、今回、一般家庭を含む小口の利用者も対象となった。資源エネルギー庁は自由化の目的として、(1)天然ガスの安定供給の確保、(2)ガス料金の抑制(競争原理による低価格化)、(3)利用メニューの多様化と事業機会拡大、(4)利用方法の拡大(コ・ジェネレーションなどの利用促進)の四つを挙げている。また、2016年4月に始まった電力自由化と合わせ、海外市場の開拓を含めた総合的なエネルギー市場の創出も目指している。22年には、現在大手3社が独占しているガスの導管部門の分離(別会社化)も進める予定。
他業種からの新規参入が期待されているが、全国で約380の新規参入申請があった電力と異なり、ガスの新規参入を表明している事業者は、LNG(液化天然ガス)の調達ルートを持つ日本瓦斯や電力大手など10社にとどまっている(17年1月末時点)。都市ガスの普及率は50%程度で、小口市場規模も約2兆4千億円と電力の3分の1程度に過ぎない。また、厳しい保安義務の履行も新規参入の障壁になっている。消費者の関心も薄く、ガス自由化より認知度が高かった電力自由化でも、新規参入の新電力に切り替えられた件数は3%足らずだった。今後、電力・ガスのセット割引を始めとするサービス競争が消費者の切り替えを促し、将来的にはエネルギー業界の再編統合につながるという見方もある。

(大迫秀樹 フリー編集者/2017年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報