オボ(読み)おぼ(英語表記)oboo

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オボ」の意味・わかりやすい解説

オボ
おぼ / 鄂博
oboo

モンゴル語ではオボガobogaともいう。モンゴルに多くみられる石堆(せきたい)の崇拝物または祭壇で、同様のものがシベリア、中国東北地方、チベット、新疆(しんきょう/シンチヤン)(新疆ウイグル自治区)、朝鮮にも分布する。基本構造は、石堆もしくは土築の基壇に木杆(もっかん)または自然の樹木が伴うものだが、規模、形態は各地域ごとに異なる。たとえばモンゴル、チベットでは石組みの円壇上に木杆、旗、または刀、槍(やり)などの武器を立てたもので、規模も大きく、ときにオボ群をなすこともあるが、シベリア、中国東北地方、朝鮮では簡単な石積みの上に木杆を立てるか、自然の樹木の下に石堆を築く程度で、群をつくることはまれである。築かれる場所は一般に神聖視される山の上や、湖・泉の近く、牧地・狩猟地の境界となる山・川・峠・道などの近く、そして寺廟(じびょう)の境内などである。オボは、旅人がそのそばを通過する際に供物を捧(ささ)げるなどそれ自身が崇拝の対象になる場合と、ある祭神の祭壇となる場合があるが、そのほかに道標や境界標の意味ももつ。オボ崇拝は元来シャマニズムシャーマニズム)と密接に結び付いており、シベリア、朝鮮などではシャマンシャーマン)がその設置場所を決めるなどするが、モンゴル、チベットではチベット仏教と習合し、シャマニズムの要素は薄い。オボの祭礼は一般に春か秋で、モンゴルとチベットでは僧侶司祭となって念教が行われ、その後家畜供犠(くぎ)、饗宴(きょうえん)、相撲(すもう)、競射、競馬などが行われる。仏教の影響のない地域ではシャマンが司祭となり、やはり供犠、饗宴、競技が行われる。いずれの場合でもオボの祭礼は遊牧、狩猟活動の一つの節目を表しているといわれる。

[佐々木史郎]

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