オフショア・センター(読み)おふしょあせんたー(英語表記)offshore center

翻訳|offshore center

知恵蔵 「オフショア・センター」の解説

オフショア・センター

非居住者からの資金調達及び非居住者に対する資金運用、いわゆる外‐外取引を金融規制税制などの面で優遇することによって、より自由かつ活発に行わせる市場。1960年代に米国の利子平衡税の導入などでユーロ市場が拡大し、金融機関の間の競争激化、より自由で低コストの地域を求めて子会社支店を設置する動きが相次いだこと、及び各国当局側においても国際金融取引における各国市場の地位向上を目指して積極的に対応したことなどから、各地にオフショア・センターが出現した。ロンドン香港のように、国内取引に対する規制が緩やかであったことから自然発生的に成立したもの(外‐外取引と国内取引との差別がないため、内外一体型といわれる)、ニューヨークIBFや東京オフショア市場(JOM:Japan Offshore Market)のように、外‐外取引は原則自由だが国内取引との間に遮断措置(国内取引と分離した特別な勘定を設ける)を講じたもの(内外分離型)、税制上の優遇措置により、国際金融取引の記帳のみが行われるタックスヘイブン型、の3つがある。金融安定化フォーラムはオフショア・センターを国際金融の波乱要因として、国際基準遵守状況の適切な評価などの必要性を説いている。

(絹川直良 国際通貨研究所経済調査部長 / 2007年)

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百科事典マイペディア 「オフショア・センター」の意味・わかりやすい解説

オフショア・センター

国内市場と切り離した形で,非住居者の資金調達や運用を,金融,税制,為替管理などの規制の少ない自由な取引として認める仲介市場(センター)。オフショア市場の形態は,(1)国内市場との間の資金交流が自由で,両市場での諸規制が同等なロンドン型,(2)国内市場との間に各種規制上の格差があり,資金交流が遮断されている内外分離型(ニューヨーク,シンガポールバーレーンルクセンブルク等),(3)租税逃避だけを目的に設立されたペーパー・カンパニーが主体で事実上金融市場とはいえないタックス・ヘイブン型(バハマ,グランド・ケイマン等)の3つのタイプに分けられる。日本でも円の国際化,東京市場の国際化を推進するため,1986年12月東京オフショア市場(JOM)が創設された。1990年代に入ってタイがオフショア・センターを創設したほか,中国の上海にも開設構想が出ている。

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世界大百科事典(旧版)内のオフショア・センターの言及

【国際金融市場】より

…今日,ロンドンはユーロダラー市場の中心地であり,パリやフランクフルトにも活発なユーロカレンシー市場が存在する。その結果,ドル金融をロンドンに奪われたアメリカは,非居住者間の金融取引に租税や為替管理上の特典を与えているオフショア・センターoffshore centerとして,1981年ニューヨークに国際金融ファシリティInternational Banking Facilities(略称IBF)を設立した。またオフショア・センターはバハマ,ケイマン諸島,パナマ,バーレーンなどがタックス・ヘイブン(租税回避地)として,またアジアダラー市場としてはシンガポール,香港が急速に発展してきている。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」