日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウミスズメ(海鳥)」の意味・わかりやすい解説
ウミスズメ(海鳥)
うみすずめ / 海雀
murrelet
auklet
広義には鳥綱チドリ目ウミスズメ科に属する海鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。同科Alcidaeはウミガラス、ウミスズメ、ウミバト、ツノメドリ、コウミスズメなどを含んでおり、世界中に21種が知られている。全長15~43.5センチメートル、上面が黒く、下面の白いものが多いが、全体暗色のものもあり、夏と冬で羽色の変わるものが多い。いずれも北半球北部の海上に生活し、大部分は寒流域に分布しているが、カンムリウミスズメSynthliborampus wumizusumeとセグロウミスズメBrachyramphus hypoleucusは暖流域に生息している。離島や岩礁の崖地(がけち)や岩の間、崖の上の草地に掘った穴などを繁殖場所にしており、1卵あるいは2卵を産む。雌雄が交代で抱卵する。小形種では24日、大形種では40日前後も抱卵するものがある。繁殖期以外は海上で過ごすが、陸地からあまり離れず、離れても最長数百キロメートル程度で、40~50キロメートルぐらいまでが多い。潜水は翼を使って行い、数十メートルは潜る。魚や底生の小動物のほか、小形種ではプランクトンも食べる。
種としてのウミスズメS. antiquusは全長25.5センチメートル。背面は黒みのある青灰色で、下面は白色。黒色の頭に白色で房状の飾り羽がある。海上の水面近くを直線的に飛ぶ。北アメリカの沿岸からアリューシャン列島、カムチャツカ半島、千島列島、オホーツク海沿岸などに分布し、わが国でも少数が北日本の離島などで繁殖しているが、多くは冬鳥として沿岸に渡来する。全国各地に渡来の記録はあるが、北日本にやや多い。エトロフウミスズメAethia cristatellaは全長24センチメートル。全身黒褐色で、頭上に前方へカールした冠羽がある。わが国では冬鳥で、北日本の海上には少なくない。マダラウミスズメB. marmoratusは北太平洋に分布している。ほかのウミスズメ類と異なり、本種の巣は海岸より24キロメートルも内陸の林の樹洞にあった例が知られている。北海道でもごく少数が繁殖している。
[柳澤紀夫]