日本大百科全書(ニッポニカ) 「イブン・イスハーク」の意味・わかりやすい解説
イブン・イスハーク
いぶんいすはーく
Ibn Isāq
(704ころ―767ころ)
イスラムの預言者ムハンマド(マホメット)の伝記の著者。この伝記は元来『(預言者の)戦記』とよばれた3部よりなる大著であったが、古くに散逸した。この原本の第2部と第3部を抜粋し注を付したイブン・ヒシャームIbn Hishām(?―833)の校訂版が『預言者の伝記』として今日まで伝わっている。本書は現在に至るまで、もっとも信頼できるムハンマド伝として権威を保っている。原著者イブン・イスハークの祖父は戦争捕虜としてメディナにきてイスラムに改宗し、著名な学者として知られた。著者の父もまた学者であった。著者自身は3代目の学者で、メディナで学んだのち、イスラム世界の各地を遊学し、バグダードで没した。
[後藤 明 2018年4月18日]