イソマツ(読み)いそまつ

改訂新版 世界大百科事典 「イソマツ」の意味・わかりやすい解説

イソマツ (磯松)
Limonium wrightii(Hance)O.Kuntze

日本南部の海岸の岩場に生えるイソマツ科の小低木状の多年草。茎が松の幹に似ているので,和名がある。茎は,太く短く枝分れして斜上する。葉は枝の先端に多数集まり,質は厚く,倒披針形,長さ2~5cm,幅4~7mm。8~9月に多数に分枝した花茎を伸ばし,多数の小穂を円錐状につける。小穂の基部には苞があり,また小穂は2枚の小苞に包まれる。萼は筒状で,浅く5裂し,花冠は筒状で5裂し,紅紫色。伊豆七島小笠原諸島,屋久島,琉球,台湾に分布する。花冠の黄色のものをウコンイソマツとして区別し,沖縄,台湾に分布する。沖縄では茎葉を関節炎に服用する。また,観賞用に栽培する。

 日本には同属の植物として,越年草で海岸の砂地に生えるハマサジL.tetragonum(Thunb.)Bull.がある。

花が5数性,子房が1室である点などで,サクラソウ科との類縁が考えられている。基部の胎座から直立する珠柄に,1個の胚珠が下垂する点が,大きな特徴である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イソマツ」の意味・わかりやすい解説

イソマツ
いそまつ / 磯松
[学] Limonium wrightii (Hance) Kuntze var. arbusculum (Maxim.) H.Hara

イソマツ科(APG分類:イソマツ科)の低木状をなす多年草。別名ムラサキイソマツ。茎は太く基部で分枝し、古い幹は黒色で横じわができ、クロマツの幹によく似ている。枝先に葉を密生し、ロゼット状に広がる。葉はかんざし形で先は円く、下方はしだいに狭くなって短い柄となる。8~9月、葉の中心から高さ7~15センチメートルの花茎を直立し、多数の小穂を円錐(えんすい)状につける。花序は側扁(そくへん)で、小穂は柄がなく、基部に小さな卵形の包葉がある。小穂は2枚の小包葉に包まれ、1~2個の花がある。萼(がく)は筒状で5裂し、白色で乾質、下部の稜(りょう)上に白い長毛がある。花冠は筒状鐘形で5裂し紅紫色である。海岸の飛沫(ひまつ)のかかるような岩場や、隆起サンゴ礁の上などに生え、伊豆諸島、九州南部、沖縄、小笠原(おがさわら)、台湾に分布する。

 名は、磯辺(いそべ)に生え、草姿が松に似ているからである。花の黄色いものが基本種でウコンイソマツ(キバナイソマツ)といい、沖縄から台湾にかけて分布する。イソマツ属は世界に約150種あり、海岸、砂漠、高山などの特殊な環境に生えるものが多い。

[高橋秀男 2021年2月17日]

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